泣きそうな歌声

食堂では、一年生たちや他の学年でにぎわっていた。
その中に遅れてやってきたのは六年生である。

伊作はそれとなく一年生の方へ視線を向けて彼女の姿を探すも11人の中にはいなかった
もう既に食べ終えて部屋に戻っているのかと思い自分たちも食事を受け取り食べていると
乱太郎たちの話し声が聞こえて聞き耳を立てる。

乱太郎「ねぇ‥‥そういえば雪奈ちゃんどうしたのかな?」
きり丸「そうえいば‥‥もういつもならこの時間いるのになぁ?」
しんべヱ「まだ、来てないねぇ〜どうしたんだろう?」

乱太郎「具合でも悪いのかな?」
きり丸「食べたら探しに行こうぜ!」
乱太郎・しんべヱ「うん!」

急いで食べ始めた乱太郎たち
伊作はあの時見た彼女の表情を見ていた為、心配になった
もしかして‥‥不信感を与えてしまいどこかへ隠れてしまった‥‥とか?
そうだとすれば僕も探しに行かないと!

留三郎「伊作‥‥どうした?」
伊作「…あ、うん‥‥一年生のところに雪奈ちゃんがいるもんだと思って探してみたんだけどいなくて、乱太郎たちの話を聞いてたんだけど

まだ来てないみたい!いつもならいるんだけどって言ってた!!」

留三郎「なに!?‥‥やっぱりあの言葉を気にして‥‥」

伊作「うん、そうかもしれない‥‥僕探してくるよ!」
留三郎「俺も行こう!あいつのことが気になるからな」

伊作「ありがとう」

二人も雪奈を探すことにした。
それを向かいで聞いていた文次郎は何とも言えない表情でごはんを食べていた。
仙蔵は何かを考える仕草をしていた。



そのころ‥‥雪奈は人通りが少ない倉庫の屋根裏にポツンと蹲るように座っていた

「‥‥‥‥」

この世には沢山の人間たちがいる。
特殊な力を持っていることを知り、それを忌み嫌い罵声を浴びせる者たち
知っても尚受け入れて仲間だと認めくれる者たち。
その力の存在を知り、私利私欲に悪意で利用しようとする者たち。
知って、同じ特殊な力を持つ者たちと仲間になり戦うものたち。

十人十色だと皆本さんは言っていた。

人間とは違う力を持っている者たちを嫌がるのは
自分たちが持っていないからで受け入れようとしていないからだと‥‥

皆本さんは普通ノーマルだけど僕たち超能力者エスパーに何の抵抗もなく普通の子供として一人の人間として接してくれた

その気持ちこころがとても嬉しかった。
どんな些細なことでも当たり前でも、そんな当たり前が貰えなかった僕たちにとってはどれも嬉しいことだったんだ

薫ねぇたちだってそれを感じ取ったから
この皆本ひとだったら信じられるそう思うから
心を開いてありのままの自分でいられる。

それは僕も同じだった‥‥

「‥‥帰りたい‥‥」








 
 













 

 



 
 
 


 



  



 

 


 





   
   

   

  
 

 


この歌は落ち着く‥‥僕の心を現したような歌だ。
歌うことで生きる意味を自分で言い聞かせているようだ。

本当に痛んでいるのは‥‥多分‥‥心だな

なれているとはいえ…不意打ちで朝から聞かされるとどうも何も起きる気が無くなってしまう

自傷気味に慕っていると背後から声が聞こえた

「‥‥モソッ)‥‥どうした?」

小さな声だけど僕は耳もいいためにはっきりと聞こえた
突然現れた気配に後ろを振り返ると‥‥食満先輩と同じ六年生なのだろうか?
初めてみる少し怖い顔をした男の人が立っていた。

「‥‥あなたは?」

「モソモソ)」

彼は「中在家 長次」というらしい。六年生だろ組だという。

「‥‥中在家…せんぱい?」

コクンと頷く彼はとなりに座ってもいいか?と聞かれたので返答に困りながら小さく頷くと静かに座った。

「‥‥」
「‥‥」

お互いに何を話すでもなく沈黙が続いた。
そろそろ午前の授業が始まる時間だが‥‥彼はいいのだろうか?
ぼくは今日授業を受ける気分にもなれずに動けずにいる。

沈黙が続くこと10分ほど彼が口を開き始めた

長次「…何か悩みがあるのか?」

「…ぇ?」

長次「…うたが…聞こえた‥‥まるで泣いているみたいだった」

と静かに話す彼に思わず目をそらし空を見つめる。
空は何処までも青い夏が近いのか最近は雨が多くなってきているようにも思えるけど
太陽はそこまでも暑くもなく過ごしやすい気候だった。

長次「いいたくなければ無理に言わなくてもいい‥‥ただ、吐きだせば楽になるぞ」

同じ六年生の先輩にいうのは少し躊躇するが彼になら‥‥話してもいいかなと思い
重たい口をゆっくりと開いた。

「‥‥実は‥‥」

今朝の出来事を先輩に話した。
文次郎と呼ばれた先輩の言葉食満先輩が庇って戦ってくれたこと。

「‥‥僕は、慣れているつもりでした。

生まれた時から備わっているこの力は、下手をすれば世界を崩壊させるほどの力なんです
悪意を持った大人たちがこの力を利用しようとして
様々な人体実験をさせられてきました。

おかげで生まれた時から持つ力と別の力も備わってしまい
僕は他の人よりさらに上を行く化け物となってしまったんです

だから‥‥忌み嫌われたり罵声を浴びさせられることなんて
当たり前でした‥‥

両親の顔何て覚えていません‥‥
赤ん坊のころに売られたようですから。

今も生きているかもわからないです

でも僕と同じ力を持つ二つ年上の子たちと出会って‥‥
受け入れてくれる仲間たちに出会って僕は‥‥初めて「生きていてよかった」と感じました

それまでは生まれてきた意味なんてわからなかったですし、何で自分は生きているんだろうって何度も思いました。

事件をきっかけにこの世界に迷い込んでからは‥‥
また本当の独りぼっちになってしまったんです

でも少しですけど、僕のことを心から受け入れてくれる人たちがこの世界にもいてくれて嬉しかったんです。

だから今日の言葉はグサッときちゃいました‥‥苦笑)」

なれていたはずなのに変ですよね?と苦笑いしながら一人で話していると
彼は突然片手を頭上に持ってきた
思わず殴られるのかと目をつむり衝撃を待つとポンポンと大きな手のひらのぬくもりを感じた。

撫でられているようだ。

「‥‥ぇ?」

長次「‥‥‥変ではない。慣れていても辛いものは辛い。
私だったら相手を殴っていた。 言葉は時に刃物にもなる‥‥‥文次郎にはあとできちんと言っておく。すまなかった」

「‥‥な、‥‥んで‥‥先輩が‥‥あやまるんですか?」

長次「同じ同級生の失態を謝罪するのは当たり前だ‥‥

彼はいい奴なんだが、頭が固い‥‥素直じゃないんだ‥‥時期にあいつにもお前のことを理解してくれる日がくる」

「‥‥そぅ‥‥ですかね?」

長次「そうだ‥‥もそ)それと‥‥先ほどの歌‥‥とても綺麗でよかった」

き、‥‥聴かれてたんだ////恥ずかしい‥‥

長次「今日は図書委員会に体験に来ると言い‥‥」

「‥‥ぇ、でも‥‥今日は火薬委員会が‥‥」

長次「私から事情を説明しておく‥‥明日火薬委員にいけばいい」

この人は顔は怖いけど心も優しい人なんだな‥‥
土井先生とはまた違った居心地さだ
この人のそばにいると何だか安心する。
出来ることなら‥‥この人のいる図書委員にいきたいなぁ〜
でも他のメンバーが僕を受け入れてくれるか‥‥心配だ。

「‥‥ありがとうございます」

長次「心配するな、委員会にはきり丸も一緒だあとは二年と五年がいるが
彼らもきっとわかってくれる‥‥」

カーンカーン‥‥
授業始まりの鐘がなる中在家先輩は立ち上がった
僕の頭を撫でて放課後待っているぞと言って一瞬にして消えた。

さすがは六年生本当に忍者みたいだ。

午前中はサボろうかな‥‥土井先生ごめんなさい
明日はちゃんと出ます。今日だけ赦してください‥‥

僕は陽だまりの中で眠りに入った。







2019/04/05
2020年の礼号は「令和」になりましたね!
生まれて初めての変わる年号に関心を覚えました
今年もよろしくお願いします

ーーーーーーーーーー
曲名は「コロニー」
bumpofchickenでした


今日の訪問者5人目