父からの依頼の段
王の間へ着くと父上が神座に座っていた

奏多「お殿様、蒼真様をお連れしました」

疾風 陽屶(はやて ひなた)
蒼真の父親であり、一国の城の主人である。戦は嫌いだが町を守るために時には戦うため武器を取ることもある真の主のような存在で、誰もが彼を慕っている

陽屶「来たか奏多、ご苦労」

それではと立ち去ろうとする奏多にお前にも聞いて欲しいと引き止めた
真剣な表情からただ事では無いと感じたのか素直に留まった


陽屶「・・・蒼真」
「父上一体どうされたのですか?」

陽屶「実はな、忍術学園というところは知っているな?」

「はぃ、確か父上の古くからの知り合いが忍びの学ぶところだと教えてもらいましたが。」

陽屶「お前にその学園の学園長にこの文を届けてもらいたいのだ」

父上は今何と言ったのだろうか?
聞き間違いでなければ忍術学園と聞こえたような気がする僕は思わず「・・・は?」と情けない返事をしてしまったのは、悪くないと思う。

室町時代という随分過去の時代に転生してしまったなとは、思っていたのだけど何で今まで気づかなかったのだろう?

たしかに東方では、「ドクダケ城が、こちらの情報を探っているとか、戦をあちこちに仕掛ける悪い城だ」と奏多や父上から教えられてきた。

あとは、「ドクササコ城」の凄腕忍者が何度かこの城に侵入して幼かった僕を攫おうと試みたようだが、うちの優秀なプロ忍者である奏多には敵わなかったようで僕は今まで無事でいることができた。

時折、風魔忍者殺しで、『風魔キラー』の異名を持つ暗殺者。フリーの忍者で兄貴分の万寿烏(ますからす)と行動を共にしている。 土寿烏(どすからす)がやってきたことがあるようで、狙いは奏多であったようだが、何故だろうと聞いてみるとかつては風魔の里でお世話になりそこの学園の生徒だったようだ!


錫高野 与四郎(すずごうや よしろう)という、風魔の里の後輩を持っていたようで奏多はその先輩だったというのも驚いた。

奏多「殿!その任は、本来私がやるべきお仕事のはずです!何故若まで、今忍術学園の付近に存在するドクタケ城やドクササコ城は、幾度となく若の命を狙っているのですぞ?


外に出たら狙われるのは明白です!」

陽屶「わかっておる!だが、これはただの文ではないお前のことのも深く関係しているのだ」

父上が真剣な表情で奏多を宥めるように、見つめながら言い聞かせる。

「・・・・父上がそこまでおっしゃるのなら、何かお考えのあってのことでしょう?

ならば、僕はそれに従います」

真剣な表情で見る父上の顔が新鮮で城主の顔をしていたのでこれは「ただ」のお使いではないことがみてとれた。
僕の答えが意外だったのか、奏多が「若っ!!」と叫んでいたが・・・・主君の決定ということもあり渋々了解のうなずきをしたのだ。

ここから東にある忍術学園に行くのには馬の脚でも一週間はかかる。
だからこそ出立は早いに越したことはない。
僕は必要なものをまとめるために一度その場を退出した

部屋に残った奏多と陽屶は重たい沈黙の中でそれぞれの思いを告げる。

奏多「・・・・殿、何故「この時期」にその任務を若に依頼したのです?」

陽屶「・・・・お前も気づいているとは思うのだが、ここ最近の神牙に「不穏な動きをする者たちが侵入している」という情報が入っている・・・」

奏多「はぃ、私の部下からもその報告を受けました。何でも「ドクササコ城」がやたらとこちらに執着し狙っているようなのですが・・・・」

奏多はそう報告しながらも蒼真の誘拐未遂事件のことを思い出していた。
蒼真が4歳くらいの幼い時、すでに眠っている子供の部屋に侵入したドクササコの凄腕忍者と呼ばれていた男が誘拐を目論んだもののそれは失敗に終わった。

それからというもの、奏多は眠っているときでも警備を強化し奏多直々に巡回しいているのも場内では度々目撃されている。賢く聡明であるが、所詮は子供・・・・知恵があっても大人びていても子供の力では大人の・・・・しかも凄腕と呼ばれている忍者には太刀打ちはできるはずがない。

敵の城へ攫われたら最後何をされるかわかったものではない。
拷問を受けたり、酷い仕打ちをさせられ殺されてしまうかもしれない・・・・そんな思いを幼い彼にはしてほしくはないと心から強く思った奏多は誰よりも若を守ると忠誠を誓っていたのだ。

陽屶「あぁ、それに今大臣の様子も些か気になることがあってな・・・・」

奏多「大臣といいますと・・・若君のおじ様の「藤堂様」ですか?」

陽屶「・・・・うむ、時折怪しげな行動をしていると侍女たちの目撃情報もある

何やら町のものではない怪しげな人間とあっているとか・・・・本当かどうかはまだ確かめていないが
その目撃した情報が入ってから城への侵入が多くなってきたと思う

蒼真のこともあるしな・・・あの子は純粋で優しい子だ誰よりもいい王様になれる。」

奏多「私もそう思います、殿によく似ていらっしゃいます」

陽屶「・・・・だからこそ、よき後継者を「息子」を死なせるわけにはいかないのだ
かたがつくまでは忍術学園の生徒として過ごしてもらうつもりだ」

既にそこの学園長のところへは文と学費も出していると付け足すようにして言うと奏多は眼を見開いて驚いた。

陽屶「奏多には、道中の護衛を任せたい・・・・無事につけることができたのなら城に戻ってきてほしい

異質な存在を排除せねば、町の者たちにも危害が及ぶ」

奏多「・・・・心得ました」

この会話があったのを知らず蒼真は、忍術学園についたらすぐに帰るのだろうと思いながら支度をしていた。

これからまた運命の歯車が少しずつ噛合い噛み合い動き出す。
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