初めての国外の段
翌日の神牙の早朝はいつもと変わらずに穏やかな日の出と、優しい小鳥たちの囀りが響き渡る
穏やかな川の流れる音、風は北国のためか少しひんやりとして冷たいでも過ごしやすい環境だなというのが肌で感じ取れる。

城門のところでは奏多が馬の準備をしている
僕の相棒「蒼穹(そら)」も準備満タンのようだ。
何故蒼穹と名付けたのかというと、北国にぴったりの白馬なのだが僕と同じ蒼い瞳を持っていたため「蒼穹」と名付けたのだ。

僕と奏多の言うことなら素直に聞くが僕たちの許可なしに触れようとすると気高い蒼穹は攻撃を容赦なく仕掛けるため基本的には奏多と僕が世話をしている。

「蒼穹・・・・今日は初めて国外へ出るんだ、少し遠い東の地へと行く

大変かもしれないけど一緒についてきてくれるかい?」

蒼穹は「もちろん」というように頷き鳴き声を上げる。
僕はうれしくなり頭をなでる。

父上には挨拶はしておいたけど母上はあまり体調がよくないようなので横になっている。
僕の初の外出に不安を拭いきれずに倒れてしまったようだ。
母上には申し訳ないことをしてしまった、道中文を送ると約束すると安堵したのか涙ぐみ僕を抱きしめて「気を付けていってらっしゃい」とほほ笑んでくれた。

僕は心配かけないように「奏多が一緒だから大丈夫です行ってきます」と元気よく挨拶をすると
道中にとおにぎりと旅の資金を出してくれたのだ。
何だか、申し訳ないと思いながらも遠慮しなくていいのですよと母上が笑ってくれたのでありがたく受け取ることにした。大金を持っているのだから山賊たちに襲われないようにしないといけないなと寄りいっそ気を付けようと心に誓い母上のもらったお守りと共に風呂敷の中に入れ背中に背負い落さないようにしっかりと結び目を強くした。

奏多も相棒の馬と共に城門を出る。
そこから駆けるように馬を走らせていると道中で町の者たちが僕たちに声をかけてくれた
おでかけですか?という者と気を付けていってください!と無事を祈ってくれる者たちに笑顔で答えて僕は生まれて初めて神牙の国を出たのであった。

北の大地を駆け始めてからどれくらいの時間が経ったのだろうか?
長い長い山道を風を切るように草木が僕たちを避けるようだ

奏多「若、お疲れではないですか?」

「・・・・大丈夫、僕は自分ができることは精一杯頑張ってみたいから・・・・」

それに体力作りもしてきたしねと付け足すようにして苦笑いでかえすと奏多は「若・・・」としみじみ何かを思いながらつぶやいた。

天候は晴天、季節は秋の序盤頃、肌寒い風が僕らの体にあたり体が冷えていくがそれもまた風流なのかなと自分で思わせながら景色の変わりゆきを横目でみる。

早朝から休まずの駆け出しで昼頃には小さな小川が流れている場所で僕らは休憩をとっていた。
走りつかれた蒼穹の水分補給も忘れない。
お昼にと渡された包み紙を広げるとおにぎりが入っていた。

「・・・おいしそう」

奏多「若は少し休憩をなさってください、私は周囲の警護をしてきます」

「でも、奏多もお腹すいたんじゃない?」

奏多「大丈夫です私はこれでもプロ忍ですから!そんじょそこらのプロ忍なんかに負けられませんからね!

ですから若は安心して休んでいてください、もし万が一の事態に遭遇した場合は私に構わずに目的地を目指して駆けてください」

「でも・・・・僕は奏多を置いてはいけない」

奏多「若、あなたは本当に心優しいお方です純粋に育ってくれたこと私どもは大変感動しております。

ですが、私は忍びで若は次期当主になられるお方です。

もうおわかりですね?私はあなたや御父上に忠誠を誓っています

あなたたちを守れるのであれば本望です!」



「では行ってまいります」と奏多は瞬神の如く消えていった。
僕は相棒の蒼穹と共に残ることになった。

今考えると物心ついた頃から一人になることはなかったと思う・・・・
だから今は奏多には悪いけど貴重な一人の時間だ。

水を飲み終わったのか蒼穹が鳴き声を上げながら僕の頬を舐める

「うふふ、水はおいしかったかい?」

返事をするかのように鳴き声を上げる。
この世界に転生してから早くも8年が過ぎた。その8年の中でもいろいろなことが起きた。

今考えるとよく生き延びたなと思う。

僕が物心つく前に、何度目かわからないと思うほど命を狙われたことがある。
ポジティブに考えると前世では体験できない貴重な体験ともいうべきか・・・・

この時代の文化にもいい加減慣れるというもの。

井戸なんて身長ではまだ届かないので一人でやろうとすると奏多がはらはらしながら見守られていたのを今でも記憶に新しく鮮明に残っている。

僕が一人で庭で過ごしているとどこからともなく忍者が表れて襲われたこともあった
食事をするときにも僕みたいな素人が気づかないような匂いを察知してご飯を食べようとしたときに止められて運んできたものに毒味をさせようとしたときに本性を現し敵の者が毒を盛ったということもあった。

僕はその時からご飯を食べることができなくなってしまった。
それをみこして奏多が世話役を申し出て食事も奏多が事前に確認してから持ってきてくれるようになったのは4歳くらいのころだったかな

多忙の奏多に何でもかんでも世話になりっぱなしで何か恩返しをしたいと密かに貯金をして町にお忍びでプレゼントを買いに行って城に戻ってくると心配した奏多が僕を叱ってきた
驚かせようと思って起こした行動が奏多を困らせてしまった悲しくてプレゼントのことなんて忘れて城を飛び出したときに潜入してきた忍びに誘拐されかけて慌てて追いかけてきた奏多が助けてくれた

喧嘩したはずなのに忍びの顔になって僕を助けてくれたんだ。
奏多に「すみません」と謝られたときは素直に自分が悪かったと謝りプレゼントのことを思い出して奏多に渡した
奏多に号泣し抱き着かれた姿を思い出し笑いする

我ながらに子供じみたことをしたと思う
すり寄ってくる蒼穹の頭をなでてやると気持ちよさそうに目を細めた。

おにぎりを食べると母上が作ったんだなぁ〜とこれぞまさに「お袋の味」というべきか
シンプルな塩おにぎりだけどそれがとてもうれしい。
ちゃんとこの世界の両親に愛されているんだと

この世界に「拒絶」されていないんだと安心できるから・・・・

腹ごしらえを済ませた僕はこれから出会うであろう忍たま乱太郎の世界のキャラクターたちにワクワクしながら奏多の帰りをまった。
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