鷲掴みされた心臓
私の好きな人は恋より友情より美作くんが一番だ。いつでもどこでもどんな時でもみっちゃんみっちゃんみっちゃんみっちゃん。ただ盲目的に崇拝するんじゃなくてその時、その時で何が美作くんにとって最良かを考えて行動する。その為だったら本好くんはどんな労力だっていとわない。つまり彼の世界の中心は美作くんでそのポジションは誰にも奪えない。奪えやしないのだ。ずるい。美作くんはずるい。5分に1度は彼の思考を奪う美作くんが少し憎い。私はどうやったって彼の視界にすら入り込むことすら困難なのに。
「………」
『………』
「これからみっちゃんと約束があるから退いてくれないかな」
ほら、またみっちゃん。
『やだ』
嫌そうな顔を隠す事なく表情を曇らせる。舌打ちなんて聞こえない振りをしてじっと本好くんの膝の上に居座り続けた。この時だけは私だって本好くんの視界にうつる事が出来るのだ。美作くんにほんの少しの優越感をだいて両手で本好くんの頬を包む。無表情で能面みたいな顔を撫でると一層眉間のしわが深くなる。肩で切り揃えられた艶々とした黒髪が僅かに揺れた、かと思うと身体を抱えられて膝から退かされていた。身体が弱かったんじゃなかったのか。
「邪魔」
あからさまな敵意にぎりぎりと胸の奥の辺りが痛みだす。でもそんなのに構ってなんていられない。だってそうしている内に彼の思考は美作くんでいっぱいになるんだから。
『一日に一度、一秒だけでもいいから私のこと思い出してよ』
相変わらず何を考えているのか分からないような顔をして興味がなさそうに教室のドアへ歩き出す本好くんが不意に立ち止まった。
「1週間に一度くらいだったら考えてあげないこともないよ」
振り返りもせず背中越しに言われた言葉にドクンと心臓が大きな音をたてた。