かけあしできみのもとへ

「駅前の広場でクリスマス用に施されたイルミネーションがとても綺麗ですよ。君も来ませんか。」


15分も前に届いていたメールには画像が添付されていて、広場のイルミネーションが写されていた。しかも写真の端にはカップルが仲睦まじく寄り添っているというおまけ付き。

馬鹿馬鹿しい。大方周りの雰囲気に充てられてこんなメールを送ってきたのだろう。何がイルミネーションだ。ただの小さな豆電の集合体ではないか。なんでも横文字にすればお洒落っぽくなると思うな。お前らはコンビニの電灯に群がるカメムシと同じだ。ここにいる奴等には物事の本質を見極める事をお勧めする。

どうせ他の女にも同じようなメールを送り、引っかかった女と仲良く色とりどりな電飾を眺めた後に人肌で暖をとるつもりなんだろう。
全くもって女を馬鹿にしているとしか言いようがない。ふんっと鼻をならし『あっそ』と至ってシンプルに返信をした後、携帯を閉じてベットへ放り投げた。
こんな寒い日にわざわざ外に呼び出すとはどんな神経しているのか疑う。ましてや私の家からではバスで30分電車で10分もかかるその広場は入浴を済ませ、メイクを落とした女を引きずり出すのには些か難しい。どうせなら赤提灯の居酒屋の暖簾でも写して送ってこい。そっちの方が数段魅力的だ。
ゆっくり暖かいコタツに身を潜ませいつも楽しみにしているバラエティを見ようと寝転がった。




*

おかしい。そう気づいたのは、バスで30分ののち電車で5分揺られている時だった。なんで私は大型量販店で購入した暖かさに特化したブルゾンを羽織り、安いペラペラのエコバッグに財布と携帯を放り込んで電車に揺られているというのだ。
今、私は温かい部屋でぬくぬくしてお気に入りのバラエティを見ている筈だ。
何故だ、何故だと頭を抱えていると電車は終点である駅に着いた。人の流れに身を任せ力なく歩いていると良く見知った後頭部が見えた。

私がこんな所にいる諸悪の根源だ。奴の隣には女の姿はない。まだあのメールに引っかかった哀れな被害者は居ないということだろう。なによりだ。くそ、こうなればとことん隠れて奴が独り寂しく電灯を眺めている無様な姿でも拝んで嘲笑って帰ろうと、人影にそっと身を潜ませた。



*

おかしい。私は人影に身を潜ませ奴の無様な姿を嘲笑っている予定だった。


なのに何故、私は駆け寄って奴の背中に張り付いているのだ。
ゆっくり振り向いた奴の蕩けるような笑みにきゅんと胸がときめく。いやいや、ときめくなんて物騒な。これではまるで俗にいう恋する乙女みたいではないか。ぎゅと包み込まれ冷えきった髪に気づくと「お風呂を済ませた後だったんですか。すみません」なんて本当に申し訳なさそうな顔をして謝ってくる。そんなこと微塵も思って無いくせに大した演技力だ。『別に』と短く呟くと手を握られ「なにか温かいものでも飲みましょうか」と近くのコーヒーショップへと歩き出した。




*

おかしい。次にそう気づいたのはフカフカのベットの上で奴が私のパンツに指を引っ掛け剥ぎとっている時だった。
ぱさりと呆気なく脱がされたそれを目で追っているとずんっと結構な質量をもったものが身体を刺激する。目が合うと少し苦しそうに目を細めていたがふ、と笑い優しく口づけられる。ここで腕を伸ばして首にしがみつくと喜ぶのだこの男は。ならば意地でもしがみつくものか。ぎゅと枕を握りしめようとした腕が自分の意思とは裏腹に奴の首に腕を廻していた。そんな馬鹿な。そして奴の満足そうな顔を眺めながら今日も好き勝手揺さぶられ霰もない声をあげるのだ。馬鹿は私だ。


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遊ばれていると思っている女。



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