灰崎
灰崎が部活を退部になった。そのニュースは瞬く間に学内中に広がり波紋を呼んでいた。
もちろんそのニュースを聞いた私とて、とても冷静ではいられなかった。何故なら彼は今や我が校のバスケ部を担う重要な人物なのだ。
例え素行や性格に難有りな奴でも結果さえ出せればヒーロー気取りで闊歩できるというとんでもないことがまかり通っているこの学校のシステムに常々異を唱えている私としてはこの話題に飛びつかない訳がない。なにがヒーローだ。ただのヒールのくせに。
まあこの話題に食いつく理由はそれだけではないけれど。
とにもかくにも私はこのニュースに酷く狼狽えていた。
『だぁっせぇええー!なにあいつあんだけ我が物顔で態度も図体もでかかったくせに有望な新人が入ったらあっさりポイとか…プッ本当ダセェ……へぶしっ!』
午後の麗らかとは言い難い天気の中、お弁当を広げ友人との団欒に勤しんでいると突如背後から衝撃が私を襲った。反射的にじわりと膜を張った瞳を瞬かせて水分を飛ばし、痛みの現況を確認すると青筋を浮かべた渦中の君が拳を握りしめ私の背後に立っていたのだ。
「てめぇ…」
『……あら灰崎くんご機嫌よう』
「何がご機嫌ようだ。人が居ねえところで陰口叩くたぁいい度胸してんな、ああっ?!」
『お生憎さま。私は本人がいても陰口くらい叩けるのよ、この負け犬!』
「うるせえ、ブス!」
『なっ、』
一撃必中。
まさにそんな言葉がぴったりな攻撃に私の繊細なハートが軋む。年頃のうら若き乙女になんちゅうことを…!唇を震わせながら更なる攻撃を繰り出そうと睨みあっていると見かねた友達から「もう止めなよ」とあっさりと舞台から退場させられた。まだまだ言いたいことはあったのに。
白けてしまった空気に興を削がれてしまったのか大人しく教室を出ていく灰崎の大きな背中を見つめていた。
*
「またお前かよ…」
『あははっ。なにそれなにそれ変なのー!』
「ウルセェ!」
案の定というべきか、部活を辞めた灰崎は物の見事に転落の一途を辿っていた。
柄の悪い変な連中とつるむようになったせいか、心身ともに悪の道へと突き進んでいる。
「俺は乳臭いガキにゃ興味ねぇんだよ。さっさと消えな」
『揉んで育てる悦びを教えてあげよう』
「揉めるほどねぇだろうが」
もちろん私のクロスチョップが炸裂したことは言うまでもない。
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