彼とおばけとわたし


目の前で黙々と食事をする夫にため息がでる。食事とは本来楽しく会話を弾ませながらやるものではないか。なのに先程から一言も発さず淡々と箸を口に運び咀嚼する動作の繰り返し。これは食事じゃない。ただの作業だ。

「ご馳走様でした」

箸を置きガタンと席を立った。

『お粗末様でした』

そう返した時には既にドアに手を掛け台所を出ていこうとしていた。会話が「いただきます」と「ご馳走様でした」の二言ってどうなの?しかも彼は帰って来てからろくに目も合わせていない。全くなんでこんな事になったのか。

初めは帰る時間が遅くなった。
次に珍しく帰って来たかと思えば彼の物とは違う女物の香水の香りがするようになった。
更に極めつけは元々そう多くはなかった夜の営みが完全に無くなった。
いくらお見合い結婚だからって、彼が人目をひくような容姿を持っていたからだって、仕事柄そういった事をしなくちゃいけない時だってあるからって、ある程度は覚悟はしていた。
しかしこうまるで避けられているような態度を取られるとどうして私と結婚したのか疑問に思う。

どうなんだろう。これって普通なのかな?

パタンと閉まるドアを眺めつつ動きを止めていた箸をゆっくり口に運んだ。

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