麦茶


ガンガン冷房の効いた部屋の筈なのに目の前の男はポタポタと滴る汗を煩わしそうに目を細めて睨み付けるだけでそれでも動きを止める気配はない。それに反して私は突き上げてくる感覚に身体中の毛穴が開いて爪先から熱が奪われていくようだ。ただ抑えつけられた部分にだけ燃えるような熱を感じる。頭の中が蕩けそうになりながら、急速に速まった動きにはしたなく声をあげることしか出来ない私はなんと無様なことか。

ぽたり、と滴が髪の毛の先から伝い勢いに任せて落ちてくる。

きつく繋がれたそこに彼が吐き出した熱が放たれた。それを卑しくも貪欲に受け止めようとしている身体にどうしようもなく劣等感を感じてしまう。彼がびくりと数度ひきつけを起こしたように震えた。すっと籠っていた熱が離れる気配を感じてひやりと肌を撫でられたような気がした。

「あつい」

一言苛立ちを含んだように呟かれた言葉と共に感じていた熱を全て奪われそうになって背中にまわしていた腕でぎゅうとしがみつけば、一旦離れようとしていた身体を再び包み込むようにしてパタリとベットに沈んだ。

「暑い」
『私は寒い。エアコン効きすぎ』
「君とは代謝が違うんです」

じろりと横目で睨まれて仕方なく身体から離れようとすればまわされた腕にぎゅうと力が加わって阻まれた。

「離れなくてもいいです」

胸を上下させて乱れた呼吸が戻っていくのを眺めながらどうしてこんなにも違うのだろうと思ってしまう。性別も、顔立ちも、性格ですらこんなに違うのに、どうしてこの人なんだろう。どうしてこの人は私を選んだんだろう。

「今、変なこと考えているでしょう」

疑問符も付かないような断定的な物言いに返事を返せずにいると、一緒に起こされそのまま抱えられてソファまで移動した。二人分の体重がかかりギシッと短くスプリングの軋む音。
テーブルの上に置いていたびっしり表面に汗をかいてしまったグラスの中で溶けて角が取れた氷が小さく鳴った。その音を耳にして思い出したかのように喉が乾きを訴えてくる。
まだふわふわとした心地で指先ですら動かすことを億劫に思いながら手を伸ばそうとするとそれより先に奪われてしまう。恨みがましくグラスの元を辿れば既にごくごくと喉を上下させながら流し込んでいく。その喉の動きにみとれてしまった私は誤魔化すようにぺろりとそこを舐めると喉の奥底で震えたのを舌先で感じとった。

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