腕:恋慕*
私は六道骸の都合のいい女のうちの一人だ。自覚はある。彼からの突然の呼び出しがあってもわりとほいほい会いに行く。
でもこの間誘われたときにたまたま予定が入っていて、それがどうしても外せない用で泣く泣くキャンセルした。
それなのにあの男ときたらあっさり別の女の子を誘っていた。そういった女の人は私以外にもたくさんいるんだろうし仕方がないで済ませられた。顔も名前も知らないような人だったのならば。
しかしよりによって彼が誘ったのは私と同じ職場の子だった。なんでこうも身近で済ませようとするのか。
次の日、その子が六道骸に誘われたとはしゃいでいたことで、私の耳にも届いてしまった。
私と彼のことは周りは知らない。都合のいい女だって自ら吹聴する趣味なんて私にはないから。
騒いでいる女の子を遠巻きに眺めながら、でも貴女が誘われる前は私に声がかかってたんだから。私が断ったから貴女にお呼びがかかったのよ。なんて何に対して張り合ってるのか考えるのも馬鹿らしくなることをひっそりと腹の内で喚いて気をまぎらわそうと努めた。
結果、まぎらわせなかった。
自分が思っている以上に私は六道骸に好意を持っていたらしい。
そりゃ身体の関係を持つくらいなんだから、多少なりとも好意はあるとは思っていたんだけど。でもそう気づいた私の行動は速かった。
普段あんまり自分からは連絡しないんだけど、六道骸を呼び出し食事もとらずホテルに連れ込んだ。
部屋に入るや否や彼の唇を奪いベッドへ押しつけて馬乗りになり煩わしい洋服を乱暴に脱ぎ捨てた。
そして彼のシャツも剥ぎ取りつつキスを繰り返し身体のラインを指でなぞりながら舌を這わせていく。
始めは驚いた顔をしていたけれど、徐々に目を細め楽しむ方へとシフトしたようだ。しかしこちらにとっては好都合。くちづける度に擽ったいのかくつくつと喉を震わせている。
「今日はやけに積極的なんですね」
『…ん、嫌だった?』
キスの合間に囁かれた言葉にそう答えると「いいえ」と短く返されただけでそれ以上何も言われなかった。
そろそろ頃合いかと腰を浮かせて硬度を増した彼のものを扱きながら何もされてないのにすっかり濡れそぼって準備が整っていた私の入り口に先端を押し当てた。ぬぷぬぷと音を立ててゆっくりと飲みこんでいく。どんだけ興奮してるんだ私は。でも黙ってその様子を眺めている彼の視線に煽られてゆるゆると腰を動かし始める。内壁が擦られて気持ちいい。動かしながら彼の唇を食むと舌を絡めて応えてくれる。
下半身の感覚も曖昧になって脳も蕩けそうだというのに彼の方はまだまだ余裕そうで。絡めていた舌を離して彼を見る。
『あれ…?あんま気持ちよくなかった?』
「いえ、気持ちいいですよ…でも、」
そこで腰をガシリと掴まれ一気に奥まで突き上げられた。
『あうっ…!』
「僕はこちらの方が好みですね」
ニヤリと笑う彼を睨むと子宮を抉るようにガンガン突き上げられ苦しさでまともに呼吸も出来ないはずなのに口をついて出てくるのは甘く溶かされた女のそれで。
このまま昇りつめそうになったところで、ずるりと引き抜かれた。
『な、んで…?…っ!』
ベッドへ寝かしつけられ、そのまま後ろから彼のものがずぷりと音を立てて入ってきた。
「どうです?君もこちらの方が好きでしょう?いつもよがって離しませんもんねえ」
角度が変わったせいか更なる快楽が私を襲う。枕を握りしめ耐えてはみたが、先程の余韻が残っていたせいか呆気なく達した。それでも腰が崩れ落ちそうになるのを掴み一気に攻め立ててくる。
『も、むり、これ以上は……っ、』
揺さぶられて意識も朦朧としているなか、スピードが速まりどんどん荒くなっていく彼の息を遠くで感じていると最奥を掠り温かいものがお腹の中にじわじわと吐き出された。
*
「今日はいつにも増して乱れていましたね」
『この間会えなかったから溜まってたんじゃない?』
「君も忙しかったんでしょう?」
お疲れ様です、と頭を撫でられてはみたものの私の腹の虫はそれだけじゃおさまらなかったみたいだ。
『…貴方もこの間はあれから忙しかったんじゃないの?』
「別にそうでもないですよ」
『職場の子が言ってたのよ。貴方に誘われたって』
「僕が、ですか?」
思い当たる節がないのか首を傾げて考える素振りをしていたが、しばらくして「ああ、」と思い至ったように口を開いた。
「あの日はレストランを予約してまして、君が来れなくなったので代わりにお付き合い願いました」
『その後も楽しんだんでしょう?』
「いえ、食事だけです」
『ウソでしょ?!だってあの六道骸がただの食事だけで終わる筈がないじゃない』
「君は僕をなんだと思っているんですか…」
呆れたように息をついてこつんと頭をくっつけてきた。
「で、それで今日は嫉妬に駆られてこうなったと…」
『ごめん。』
「いいえ、僕はとても楽しかったですよ」
くつくつと笑いながら引き寄せられてキスを顔中に降らせてくる。最後にちゅと腕にキスをされ、抱き締められて一緒に眠った。
例え都合のいい女の一人だっていいや、なんて思えなくなってきている私のことを知ったら彼は離れていってしまうんだろうか。
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