そういえば今日は起きてからチョコレートをひとかけと水しか飲んでいなかったことを思い出した。道理でこの時間に腹が減るわけだ。まだ生徒が来るまでには時間がある。授業の準備も既に終えている。となれば今のうちに済ませてしまおうと鞄の隣に置いていたビニール袋を取り出した。
昨日の焼き肉の後、逃げそびれた僕はあれからずるずると沢田達に連れられはしごを続けた。
いつの間にか居なくなってしまった雲雀くん恨みますよ。くだをまく沢田に生徒に手を出すなとか訳のわからない説教を延々と受け続けた。
大体ちゃんと伝えた筈だ、卒業まで待つと。
そして空が白じんできた頃ようやく解放された。重い身体を引きずりながら家へ着くとシャワーを軽く浴びてそのままベットへと潜り込んだ。そして見事寝過ごしてしまった。
結局家で食べれなかったのでここに来る途中近所のパン屋に立ち寄りいくつか購入してきた。
このパン屋は情報紙にも取り上げられたりとなかなか評判のいい店で人気のものはすぐに売り切れてしまう。今日はまだ残っていたので買うことができたが。
自販機で買ってきたエスプレッソを机の上に置き、気に入りのパンを一口かじったところで誰かに呼ばれた。
『六道先生いますかー?』
ひょこりとドアから顔を覗かせたなまえさんが僕を見つけると嬉しそうに近づいてきた。ああ今日も可愛い。君が今の僕の癒しです。
『あ、分からないところがあったんですけど…やっぱり後にします』
気まずそうに机の上のものを見てぴたりと動きが止まった。
急いで口のなかのものをコーヒーで流し込んで立ち去ろうとするなまえさんを呼び止める。
「……構いませんよ。どこが分からないんですか?」
『ここなんですけど』
おずおずと差し出されたプリントを覗くと大きなバッテンがつけられていた。
*
説明はしているが彼女の視線は先程からちらちらと机の上のビニール袋を気にしている。ちなみに僕の視線はずっと彼女の太股をちらちらと気にしている。
「君も食べますか?」
『えっ?』
代わりに僕は君を食べたいんですけど。とはさすがに言えずにこりと笑うと、一瞬顔を輝かせたがすぐにしゅんと表情を曇らせた。
『先生のご飯だからいいです』
ふるふると頭を振って健気に僕を気遣う姿がいじらしい。ああもう本当に可愛らしいんですから。
「じゃあこうしましょうか」
『え?』
軽く腕をつかんで引き寄せるとバランスを崩して僕の膝の上にすとんと落ち着いた。柔らかいおしりの感触が太股にじんわりと広がる。余韻を噛みしめる前にビニール袋の中からパンをひとつ取り出した。
「はい、あーん」
『えっ、えっ…?』
「こうしていれば僕の影に隠れて誰にも見つかりませんから安心して食べれます。僕と君だけの秘密です」
『ひみつ…』
目の前に差し出されたパンの誘惑になまえさんの口元にきらりと輝きを放つ涎。
『おいしい…!』
「クフフ、そうでしょう?結構有名なんですよここの店」
『知ってます。この前テレビで紹介されてました』
「今度一緒に行きましょうか?」
『はいっ!』
にこにことパンを頬張りながら頷くなまえさんにつられて頬が緩む。
いつか僕のを見てよだれを垂らしてくれたら先生とっても嬉しいです。
なまえさんとの他愛ないひとときは沢田のレーザーポインタが僕の後頭部を直撃して台無しにされた。