ああ、めちゃくちゃだ。
このところずっとモヤモヤしていた。骸さんに会う度に惹かれていく自分に気づかないふりをして友達のままでいればずっと一緒にいれるんだって思ってた。
あの日二人で買い物に行くことになった時だってデートみたいだなんてひとりで暢気にはしゃいだりして…。
でも家に帰ってからもう自分の気持ちを抑えきれなくなっていることに気づいて急に会うのが怖くなった。
今だって求められて本当は嬉しいはずなのに素直に喜べなくてまた穿った考えが頭を過る。
そんな浅ましい私の考えなんて全て骸さんにはお見通しだったみたいだ。
今まで私は骸さんにどんな風にうつってたんだろう。
ちょっと声をかければ尻尾振ってついて来るバカな女だって思ってたのかな。
悲しいけどその通りだ。
なのにいざコトに及ぼうとしたら拒んだりして面倒な女だって思われたのかも。
それなのに今度は押し倒して欲望丸出しの顔で馬乗りになる女なんて願い下げに決まっている。
「…だったらお断りします」
ほら、やっぱり。
じっと私のを見据えてはっきりとそういい放つ骸さんになんだか笑いたくなる。
もうどうでもいいや。どんな最低な女だって思われてもいい。もう一度だけ骸さんに触れたい。この温もりだけでしばらくは生きていける。
黒いネクタイをほどいて………ほどいて、ほど…うん、この際ネクタイとかいいや。私、骸さんのスーツ姿好きだし。
ネクタイは諦めてシャツの隙間から透き通るような白い肌に指を滑らせた。
くすぐったそうに目を細めて穏やかに「やめなさい」と声だけで制する。
それからゆっくり身体を起こすと、優しく肩を抱かれじっと不思議な色の瞳に見つめられた。
「僕は君の思い出になるだなんてまっぴらです」
こんな変な女は思い出にすら残したくないっていうのか。
気まずくなって骸さんからそっと視線を外す。
「僕は君とずっと一緒にいたいと思っていたんです」
『え?』
「君とはお付き合いを前提にと思っていました」
『うそ』
「嘘じゃありません」
『嘘だ。だって骸さん、私のこと呼べばすぐに飛んでくる都合のいい女だって思ってたんですよね?』
「それは心外ですが、誤解されるような事をした僕も悪いんでしょう」
困ったように眉を下げて首を傾げる骸さんに戸惑う。
えっ、違うの?
急展開に頭がついていかない。
「さて」
微笑む骸さんに見惚れていたらぐるりと視界が変わった。
「誤解も解けたところで、仲直りしませんか?」