スクアーロさんお誕生日おめでとうございます

私は幼い頃スクアーロにここへ連れてこられたらしい。その事実を知ったのは丁度15歳になった日だった。

真っ白なクリームの上に毒々しいまでに赤い苺ののったショートケーキの上に私の年齢とスクアーロの年齢の数字の刺さった趣味の悪いおそらくベルが刺したのであろうドクロの蝋燭の炎を吹き消したと同時にパンッと軽い破裂音が耳に障る。紙テープを一身に浴びながら隣から伸びてきた手に乱暴に頭を撫でられぐしゃぐしゃになった髪を直していると明るくなった室内の眩い光に目をしかめる。
今となってはわざとらしい咳払いをひとつして神妙な顔をした他でもないスクアーロ本人に淡々とした口調で告げられた。

彼曰くいつものごとくとあるファミリーの殲滅を言い渡され任務をこなしている時だった。
屋敷で息を潜めていた最後の一組の男女を片付けて部屋を出ていこうとした時に揺れるバルコニーのカーテンの隙間から赤い靴のつま先を視界の端で捉えたらしい。
報告を受けていた人数と違うことに舌打ちをしつつ、カーテンを切り裂くとそこには月明かりの射すバルコニーを背にした私がひっそりと立っていたそうだ。

『わたしはころさないの?』

まばたきもせずじっと見上げてくる瞳は恐怖も絶望も哀しみも映してはおらずただの純粋な疑問を投げかけてきたらしい。

まるでホラーだ。

なぜかそこで始末されなかった私はそのままスクアーロに連れ帰られ今に至るというわけだ。
なるほど。顔立ち、瞳の色、髪の色、肌の色、頭脳、運動能力、剣の腕、何一つ私達が似ていない理由がよくわかった。見たことのない母親似なのかと思っていたが、種まで違っていたのなら似る筈もない。毎年こうして皆に祝ってもらう誕生日がスクアーロと同じ日なこともただの偶然ではなかった。私の誕生日が分からなかったから彼の誕生日と一緒に祝ってもらっていただけなのだ。
今現在マフィア学校なるものに通っているが私はそこの学校で教えられたことをどれもうまくやることができずにいる。あのスクアーロの娘なのに。という陰口にしては大きすぎるそれに随分悩まされてきた。でもそれは初めから悩むなんておこがましいことだったんだろう。だって私は彼の娘なんかじゃなかったのだから。

長年の疑問が晴れてスッキリとしたがしかし新たな疑問が浮かんでくる。どうしてスクアーロはあの時私を殺さなかったのか。ただの気まぐれか、憐れみか、それとも報告を受けていなかった事が関係しているのか。

今となってはもうどうでもいい。
そうどうでもいいのだ。

「これからはお前の好きに生きろ」

そう言うスクアーロの声や眼差しは慈しむように優しい。
父親代わりとして育ててくれたことに感謝すべきか。はたまた実の両親を殺された敵として憎むべきか。

でも彼の言葉に従うならば私のすべきことなんてひとつしかない。
そう私は15歳。ニキビひとつ出来ただけで絶望できる悩める乙女にそんな超弩級の話をしてただで済むと思うな。

『ふざけんな、クソ野郎!!』

綺麗に彩られたケーキはスクアーロの顔面へと綺麗にめり込んでいく。

しばらくの静寂の後、ぶはっ!と愉快そうに笑うボスの笑い声を皮切りに騒々しくなる室内のざわめきをBGMに私は部屋を出た。

私の反抗期はこうして幕を開けた。



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