シチリアレモングラニータ

目の前で幸せそうに苺のショートケーキを頬張るなまえを見ながらチョコレートドリンクを一口啜った。
甘ったるい味が口いっぱいに広がり思わず眉をしかめる。やっぱり今の時期にはこの甘さはくどすぎた。頼んだのは失敗だったかもしれない。これ以上飲む気にもなれず、グラスをテーブルの上に戻して水で口の中を流す。

なまえはといえば僕のことは眼中にないようでショートケーキを平らげたあとは、苺タルトに取り掛かろうとフォークを突き刺した。
しかし、底の生地が固いようで思うように切れないらしく苦戦しているようだ。
そんな姿に呆れつつもどこか微笑ましい気持ちになるのは惚れた弱みと言うものだろうか。

中学を卒業するまではろくに手も出せない状況にやきもきしながら(一度の暴走は除くとして)それでもなんとかやり過ごしてきた。
自分でもこんなに気が長いとは思わなかった。
しかし様々な諸事情が片付いた今年からはと思っていたが、非常に難航している。

『六道』

フォークをこちらへ向けて差し出してくる。

『おいしいよ』

食べろと言うことらしい。
差し出されたフォークを口のなかに運ぶと苺の酸味で先ほど残っていた甘さが消されさっぱりとした口当たりだ。
僕が食べたのを見届けてからちらりとチョコレートドリンクへ目を向ける。

『それ、飲まないの?』
「ええ。少し甘過ぎました」
『おいしい?』
「飲んでみますか?」

ん、と頷いてなまえの頼んでいたドリンクの入ったグラスを差し出した。

『じゃあこっち口つけてないから交換ね』
「ありがとうございます」

*

『早く柿本君たちも高校に来るといいね』

もぐもぐと咀嚼をしながらふと思いついたように口にしたなまえに眩暈を起こしそうになる。一度ちゃんと伝えていたはずの告白はどうやらなまえの中ではすっかりなかったことにされているらしい。

「…僕は千種達が居なくて寂しいから君といるわけじゃありませんよ」
『そうなの?』

意外そうに目を丸くして見上げてくるなまえに内心ため息がでる。
どうしてここまでこの僕が骨を折っているというのにこうも伝わらないものなのか。

「そうです」

ふうん、とさして興味もなく呟かれた言葉にまだまだ道のりは遠そうだとレモングラニータの酸味が自棄にしみた。



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