小倉トースト

最近のもっぱらの悩みは服のサイズが合わなくなってきたこと。成長期だし?まあそんなこともあるよね!と明るく慰めてくれる友達もいるがそんなレベルではないことはどんなに目をそらし続けてきたって隠しきれなくなっていた。背が伸びたのならまだいい。しかし私の身体は縦ではなく横へと見事に成長を遂げていた。
例えばお気に入りだったこのスカート。今まで騙し騙し履いてきたが今まさにその役目を終えようとしている。カーペットの上にころころと転がるボタンを静かに眺めながら私の中でひとつの時代が幕を閉じたことを悟った。

そして絶望の中立ちすくむ私の背後からノックの音が響く。

「なまえ」

返事を待たずに開かれたドアの先には雲雀がいた。スカートの留め具を抑えた私を一瞥したあとふっと優しく目元を緩める。

「朝食が出来たよ」

一言だけ簡潔に用件のみを残しあっさり部屋を出ていった。

*

キッチンに向かうと甘い香りが鼻を擽る。いつもは焼き魚の芳ばしい香りに満たされているというのに。
疑問に思いながらドアを開けると椅子を引いてくれた雲雀にありがとうと声をかけてテーブルにつく。そして皿の上に用意されたものを見て頭を抱えた。

『なにこれ…』
「いつもは和食だけど今日はトーストにしてみたんだ」

少しだけ得意気に見える雲雀のテーブルの前には小倉餡の袋が無造作に置かれていた。どうやら一袋丸々使いきっているとみた。

「食べてみて」

そんな顔の筋肉の動きもできたんだと思うくらい柔らかく笑う雲雀に『いただきます』と手を合わせカットされたトーストをひとつ手に取り口へ運ぶ。さくりとしたトーストの食感と上品なあんこの絶妙な甘さに思わず頬が緩む。美味しくない訳がない最強の組み合わせにまたスカートのサイズがひとつあがる予感がした。



ALICE+