カラフルな悪戯
秀徳の合宿は終わった。
「ありがとうございました!!!」
全員で、[波切荘]に向かって礼をする。
選手達は、貸し切りバスに乗り込む。
「よし、全員揃ってるな」
大坪さんが、点呼を取る。
私は、自分の席に座ろうとした。
…でも緑間君は、私の手を握ったまま離さない。
私は困惑した。
『真太郎…手…』
「名前、俺とお前の関係は、もう来た時とは違うのだよ」
合宿中に告られて、緑間君と私はカレカノになったのだった。
『いやあのね、ここでは私は単なるマネージャーだから、公私混同は…』
「心配ない」
緑間君はドヤ顔で、眼鏡のブリッジを上げる。
「今日の俺の我儘の権利を使うのだよ。…この為に、今日は使わずに取っておいたのだよ」
「苗字」
中谷監督に声をかけられる。
『はっはい!』
「緑間の隣に座ってやれ」
『えっ!?』監督公認ですかっ!??
「いいからさっさと座れ!パイナップルでシバくぞ!!」
宮地先輩まで…!?
(先輩、真ちゃんと名前ちゃんのアレ…いいんスか?)
(緑間の我儘を彼女関係で使わせてやれば、その分、言う事を聞かせやすくなる
…学生の領分をはみ出さない限りは、好きにさせとけ)
(うっわー…せこいと言うか…名前ちゃん、真ちゃんのコントローラーっスねwww)
『…真太郎君、お邪魔します』
「ああ」
私は緑間君の隣に座った。
そのまま手を握られたままなので、何だか照れくさい。
告られた後、一緒に帰って来た私達を見て、先輩方や高尾君には冷やかされっ放しだし。
しばらくバスに揺られながら、ぼーっとしていると、不意に肩に重みを感じた。
『真太郎…!?』
緑間君は、私の肩に頭を預けながら、微かに寝息を立てていた。
合宿での疲れが溜まっていたんだろうなぁ…無理もないか。
私は、緑間君の髪の毛を、起こさない様にそっと撫でてみた。
あ…サラサラして、とても手触りがいい。
…何だか、癖になりそう。
私は、手元にある鞄から、ポーチを取り出した。
※※※
「着いたぞ。皆、降りろ」
どやどやと、選手達が降りて行く。
緑間君も目を覚ました。
『よく寝てたね。全然起きなかったでしょ?』
「名前の肩は、とても寝心地が良かったのだよ」
『…そ、そう?…真太郎の寝顔、とても可愛かったよ』
照れながら言った私の言葉に、緑間君は顔を赤らめた。
「男に、可愛いなどと言うものではないのだよ」
高尾君が、私達の席にやってくるなり、ぶっと吹き出した。
「ちょっww真ちゃん!?何それ、可愛過ぎっしょ!!??」
緑間君は少しむっとして応じる。
「高尾まで何なのだよ?」
「ホラ、真ちゃん!コレ!!」
高尾君は、緑間君をバスのサイドミラーの場所まで連れて行く。
「何なのだよ!?これは!!!」
緑間君の叫び声が聞こえて来た。
私は、緑間君が眠っている隙に、彼の髪の毛を、手持ちのありったけの可愛いピンで留めていた。
リボン型、花型、星型、ハート型、クローバー型、ラインストーンのとか、ビーズ製の、ゆるキャラ型のも…
だから今の緑間君の頭は、元の緑色に加えて、おファンシーでカラフルになってる。
「名前っ!!!」
緑間君は怒っているけど、如何せん可愛過ぎて、迫力に欠ける事甚だしい。
先輩達は、腹を抱えて大爆笑している。
…監督まで、下に顔を向けて手で口を覆っているから表情は見えないけど、肩がプルプル震えている。
『えー!?だって、可愛いじゃん!』
「男が可愛くされても、無意味なのだよ!!!」
『そんな事ないよ!あんまり可愛いから、携帯で自撮りして待ち受け画像にしちゃったもんね!どうだっ!!?』
私は、携帯の画像を見せた。
緑間君が、色とりどりのピンを着けて、私の肩で寝ている時に撮ったものだ。
緑間君は真っ赤になった。
「消すのだよ!!!」
『やーだよーw今日のおは朝での蟹座のラッキーアイテムは、好きな人と一緒の画像の待ち受け携帯だもんっっ!!!』
「…好きな人…!?」
緑間君はぴしりと固まった。
『緑間君だって、それで今朝早く、私を叩き起こして一緒に写メしたじゃん!』
「…そ、そうだったのだよ。名前、その画像を俺の携帯にも送信するのだよ!」
「はー、アホらしー…」
「夫婦喧嘩は犬でも食わぬってヤツだな」
「おい、緑間!いつまで苗字とイチャついてやがる!?轢くぞ!!!」
「おい、真ちゃん!そのままの頭で、制服着て帰るつもりか!?」
「名前がしてくれたものだ。そのまま着けていくのだよ」
『…いや、それ冗談だから!wつか、ピン必要だから返して〜!!』