ロレンスとジュリエット-1-
秀徳高校一年
-高尾和成side-
文化祭で、うちのクラスの出し物は演劇と決まった。
劇は「ロミオとジュリエット」
それで、今はその配役を決めているんだけど…
あ〜あ。
隣で名前ちゃんは、ぐっすりと寝ている。
真ちゃんが起こせと煩いけど、別にこれ、授業中じゃないからなー。
名前ちゃんの寝顔がじっくり見れるし、これはこれで役得かも…?
「それでは、自薦他薦ありましたらどうぞ!」
委員が黒板に名前を書き出している。
「はーい!私は、ロミオ役は緑間君が良いと思います!!」
早速、クラスメイトから意見が出た。
ひょーwww
面白いけど、仏頂面が標準装備の真ちゃんに出来るのかねぇ…???
真ちゃんは徐に立ち上がって発言した。
「引き受けても別に構わないが、それには、一つ条件があるのだよ…」
その「条件」を聞いた教室中がどよめき、俺は胸が苦しくなった。
※※※
-名前side-
「…名前ちゃん、名前ちゃん!」
『ふぁ…?』
私は寝ぼけ眼を擦った。
視界には、高尾君の顔がいっぱいに映っている。
顔の近さに、私は一気に覚醒する。
「おはよーさん、名前ちゃんの寝顔は可愛かったよ!」
『え…?』
私は顔を赤らめた。
見られてたなんて恥ずかしい…
「苗字、決まったぞ」
緑間君は、私の頭にぽんと手を置いた。
『…ん?…何が?』
「黒板を見てみるのだよ」
『黒板…?』
黒板には、決定した配役が書いてあった。
ロミオ 緑間真太郎
ジュリエット 苗字名前
パリス ……
ロレンス僧 高尾和成
ティボルト ……
え?
………ええええええええええええーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!?????
『ちょっとー!?なに人が寝てる間に、勝手に決めちゃってんのっっ!!!???』
私の抗議を緑間君は、にべも無く一蹴した。
「バカめ。HRの時に寝てる方が悪い」
『そうかもしれないけどっっ!いくら寝てるからと言っても、私の意思は無視かよ!?』
人前で喋るとか、究極に苦手なのに!!
緑間君は溜息を吐いた。
「…もし、苗字がやらないのなら、俺も降りるのだよ」
『え…?でも、もう決まってんじゃん?』
「だから苗字も覚悟するのだよ」
『脅迫か!!?』
「死なばもろともなのだよ」
『大げさだよ!…劇中ではそうだけど!!』
打ち沈む私を、高尾君は肩を叩いて励ましてくれる。
「名前ちゃん、大丈夫だよ!俺達が付いてるから頑張ろーぜ?」
『…高尾君。…ありがとう』
彼の優しい言葉に胸が熱くなる。
そう言ってくれるなら、自分なりに頑張ってみよう…と思った。
※※※
-高尾side-
真ちゃんのロミオ役は、主に女子から絶大な票を集めた。
でも、肝心の真ちゃんは、役を引き受ける事と引き換えに、名前ちゃんをジュリエットにする事を求めたんだ。
これって当の本人は寝てたけど、クラス中に名前ちゃんを好きだと宣言したにも等しいんじゃないの?
無自覚って恐ろしい。
…俺だって。
名前ちゃんがジュリエット役やるなら、ロミオ役やりたいよ。
これじゃ…このまま真ちゃんに取られてしまう…どうしたらいいんだ?
真ちゃんと名前ちゃんの練習は、積み重ねる度に上手くなっていった。
あの鉄面皮の真ちゃんが、ロミオ役で愛を囁けるとは思ってなかったんだけど…
「その美しい貴女の手に、せっ…接吻をお許し願えないだろうか?」
本来なら歯の浮くような台詞なのに、真っ赤になって名前ちゃんの手を取り、つっかえながら言う様は反って真に迫っている。
つられたのか、名前ちゃんも真っ赤になってる。
例え劇でも、一時の恋人同士になれるのなら…か。
今は心の底から真ちゃんが羨ましい、と思った。
俺は柄にもなく、胸が痛んで目を伏せた。
※※※
-名前side-
そして今日は衣装合わせの日。
緑間君は、ブラウスとベルトで絞めたチュニックにタイツ、それにマントを合わせていた。
元々背が高い美丈夫なんで、とても様になっている。
でも、眼鏡とラッキーアイテムばかりは致し方ないw
コンタクトは合う合わないとかあるし。
眼鏡がないと、掃除用具用ロッカーに話しかけたりしているからwww
高尾君は、こげ茶色の頭巾に長衣、腰には荒縄のベルトにサンダル、ロザリオ。(フランチェスコ派なので)ちょっと地味だけど本格的。
彼も整った容姿ではあるが、元々の愛嬌のせいで、僧侶と言うより魔法使いみたいな独特の雰囲気を醸し出している。
私は、フェイクパールで飾ったボンネットにハイウエストの紅いドレス。
こんな衣装を身に着けるなんて初めてだ。
薄く化粧も施してもらう。
私はドキドキしながら衣装をお披露目する。
…似合わなかったらどうしよう…?
おずおずと出て行くと、皆の視線が一斉に私に注がれた。
「………」
何だろう?
皆…私を見て沈黙…と言うより固まっているような。
…そんなに可笑しいのだろうか?
高尾君と目が合った。
信じられないものを見たみたいに、目が見開いている。
「か」
か?
「可愛い…!」
小さい呟きが私の耳朶を打った。
『えっ!?』
そんな事言われたら、照れてしまうよ。
衣装担当の子が、自信ありげに言う。
「これは、今回の演劇部門の優勝はいただきだね!!」
…それって…後は、私達演じる者次第って事だね…
プレッシャー感じるなぁ。
上手く出来るといいんだけど。