緑間Birthday企画


7月のUnlucky day-1-




「秀徳高校入学生代表、緑間真太郎」

私は俯いた。
推薦を受けながら首席入学を果たした彼の言葉が講堂内に流れるが、私の頭には入って来なかった。
本当なら、あそこに立っていたのは私の筈だったのに。
そう思うのも虚しくて。事実はかくの如く非情だった。

私は学力に自信があったけど、次点だった。
負けた事が悔しくて、唇を噛み締める。

そして…何の因果か、その彼とはクラスも同じで席も隣同士。


私は風紀委員をやっていた。
その日は、宮地先輩はバスケ部で出れないとの事だったので、私が書類を渡しに行く事を頼まれた。
私は体育館に行き、そして見てしまった。
黙々と一人シュートを撃ち続ける緑間を。

「おう、苗字か。悪りーな!」
宮地先輩は私から書類を受け取ると、私が茫然と見ていた緑間に顎をしゃくって顔を顰めた。
「あいつのシュート、あり得ねえだろ。…見たの、初めてか?」
『……ええ。何ですか? アレ』
「キセキの世代っつってな、バスケやってるヤツには超有名人なんだよな。
アイツ、性格は我儘で腹立つけど、あれ見せられたら何も言えねーよな!」
そうでなきゃ、木村の軽トラで轢いてやる所だけどな、と物騒な台詞を吐いていたが、
厳しい先輩なりに緑間を認めている事が感じられた。

その時から、私の頭からは緑間の事が頭を離れなくなってしまった。

あの、美しい放物線を描いたシュート。
宮地先輩が言うには、恐ろしい事に100%決めるそうだ。
天才な上に努力を怠らない緑間。
悔しいけど…あれではとても勝てる気がしない。

でも、それだからこそ私は、彼に認めて欲しいと強く意識した。
私に出来る事で彼を凌駕すれば、或は認めて貰えるかもしれない。

それは、私自身もまだ自覚してない、無意識の恋心だった。

※※※

「今日は数学の小テストを返す」
成績順に渡すとの事で、当然の様に真っ先に緑間が呼ばれた。
「さすがだな」との先生の褒め言葉に「当然なのだよ」と返す。
次に呼ばれたのは私。

緑間とすれ違う瞬間、彼の持っていたテスト用紙がチラリと見えた。
100点満点取ってる。
彼は、私を横目で見やると、フッと口元だけで笑い、眼鏡のブリッジを上げた。

「苗字、お前も良く頑張ったな! ただ…どうしてもケアレスミスが出るな」
『……すみません』

緑間は、いつも激しい練習をしているのにも関わらず、成績で私はどうしても勝てない。
今回は、自信あったのに…!

「解答後、見直しを怠るからだ」
横から緑間の声が聞こえた。

『…っ! 何度も見直したよ!!』
「でも現に見落としたろう」
『一つ…間違いが見付かって直したけど…』
「それで油断したか。お前は人事を尽くせてはいないのだよ」

悔しいが、結果が物語っている。
『…今度は…負けない!!』
「フッ、無駄だな。苗字は、おは朝のラッキーアイテムは所持してないからな。
だから人事を尽くせてない、と言ったのだ」

ラッキーアイテムの問題なのかよ。
私が彼を睨んだら、すぐ近くの席で「ブフォw」と吹き出す声が聞こえた。

『高尾? 何か可笑しいのよ!?』
「全くなのだよ!俺達は真面目に話をしているだけなのだよ!!」

私達の返しを聞いた高尾は、ますます身体を折って笑い出した。
「ちょ、ツンデレ同士の会話がツボってーwwwって、二人共意見一致してんじゃんwww」
「『一致してない!!』のだよ!!」
同時に同じ台詞を発してしまった、私と緑間は互いに呆然とし、「気が合うね、お二人さん!」と高尾は更に笑い転げた。

そして授業中騒ぐな! と、纏めて先生に怒られてしまった。何で私が…! 解せぬ。

※※※

七月になった。

放課後、彼等と一緒に教室の掃除をしていたら、緑間がゴミを捨てに行った時に、高尾に声をかけられた。

「苗字ちゃん、真ちゃんの事、好きっしょ?」
『〜〜〜っ!!??? なっ…!!??』
かっと頬に血が上り、口をパクパクさせて咄嗟に返事が出来ないでいたら、高尾がブッと吹き出した。

『高尾っ!?』
「いやー、ゴメンゴメン! 苗字ちゃん、可愛過ぎw …で、どーするの?」
『何が?』
「……もうすぐ、真ちゃんの誕生日なんだよねー」
『それが何? つかいつよ?』
「7月7日の七夕。苗字ちゃん、祝ってあげたりする気はない?」

私は俯いて小声で答えた。
『……緑間は、私に祝われても嬉しくないよ、きっと』
「そんな事ねーって! 結構あれでも苗字ちゃんの事、気にしてんだぜ?」
『……え?』

高尾に言われてドキンとした。
「真ちゃん、ツンデレだかんな。あれでも苗字ちゃんの頑張りは、かなり評価してたぜ。
…最もあの性格だから、本人の前では絶対に言わねーけどな!」

私……緑間の事…?

考えると、胸が締め付けられる様に苦しくなって来た。
でもそれは、決して不快な感情じゃなくて。甘くて切ない感じで。

『……私、緑間の誕生日を祝っても…良いのかな?』

初めて素直になった言葉がポロリと零れる。
口喧嘩してばかりじゃなくて…本当は仲良くなりたかった。
でも彼と会うと、どうしても意地を張ってしまって……その繰り返し。そんな自分が嫌になる。

高尾は、不安気な私に片目を瞑ってみせた。
「苗字ちゃんにその気があるなら俺、応援するぜ!」
『……ありがとう。私、やってみるね』

私は初めて高尾に、はにかみ、ぎこちなく微笑んだ。
それを廊下に戻って来ていた緑間に、窓越しに見られていた事には気が付かなかった。


私は彼の為に、緑を基調としたバースデーカードを二つ購入した。
二つとも気に入ったので、どちらにも決められなかったのだ。

一つ目は蔦で回りを囲ったデザイン。
もう一つはシンプルなデザインで、ワンポイントに幸運の印である四葉のクローバーがあしらわれている。

『……どうしようか?』
私は蔦のカードに、「緑間へ。誕生日おめでとう! 今度は負けないからね!!」と書いた。
…でもこれじゃ、前と同じかな。

もう一枚のクローバーの方には、躊躇いつつ異なる文を書いた。
「誕生日おめでとう! 幸運に満ちた素敵な日になります様に。…大好きな緑間へ」

うっ!? 自分で書いてて恥ずかしい!
思わず衝動的に破ってしまいそうになったが、応援する、と言う高尾の言葉を思い出して、我を取り戻した。
それぞれ封筒に入れて鞄に忍ばせる。

まだプレゼントまであげる勇気はない。
クローバーの方は、自分でお守り代わりに持っていよう。
いつか…こんな風に伝えられたら良いな、と思いながら。


そして当日、私は朝から絶望の底に叩き落とされた。
いつも緑間の見ているおは朝。
今日ばかりは占いの結果が気になるので点けたのだが…

今日一日は、私の星座の星座は蟹座とは相性が悪く、特に異性間での接触を避けた方が良い、と出ていた。




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