しゃぼん玉
シャッ。カーテンランナーが軽やかに鳴る。ひょこりと顔を覗かせたトサカヘッドの黒が、カーテンの白を際立たせる。
「おーおー、よく眠ってるこって」
揶揄るような声音で呟いたのは黒尾だ。
二限をまるまるさぼった夜久を珍しく思い、夜久と仲の良い級友に問うてみたのだ。
『なー、夜っ久んは?』
『ぐふふ、黒尾には教えてやんね』
『なんだと教えろ楽しそうだな』
夜久にこんな相手がいようとは、初耳だった。まあ、普段からそんな話をする仲でもなかったけれど。
(夜っ久んの弱み、いっこゲットー)
ニヤァとなんとも人の悪い顔で笑った黒尾は、無言でスマホを取りだす。言うまでもなくカメラアプリを起動した。
レンズを向ける。画面を覗く。
幼子のように小さくまるまり、くっついて眠るふたりの姿が映る。差しこむ太陽の光に、ふたりの髪が淡く透けている。
──光に包まれてるみてえ。
……いや、いやいや、何言ってる。
らしからぬことを考えてしまった自分に面喰らう。気を取り直し、もう一度画面を見る。
しかしその、至極しあわせそうな寝顔がやはり、黒尾のこころの変な部分をくすぐる。
(……なんだってんだよ)
黒尾は無言でスマホをおろした。
「……そいや三限、自習だってよ」
だからもうちょい、寝てても大丈夫だぞ。
出かかった言葉をすんでで止め、踵を返す。その口元は、確かに優しく笑っていた。
しゃぼん玉 ✽ 割らずに内側に入る術 終