05
「このガキ……! 父親同然の俺に刃向かって……!! もう1回だ! 心も体もへし折ってやる……!」
「……確かに、次やったら絶対に僕が負けます。でも、僕らの担任は殺せんせーで、僕らの教官は烏間先生です。これは絶対にゆずれません。ごめんなさい、出て行ってください」
そう言って渚は鷹岡に頭を下げる。
「黙って聞いてりゃ……大人に向かってなんて口を……!!」
怒りが収まらない鷹岡が渚に殴りかかろうとしたが、烏間先生に止められ地面に倒れこんだ。
「俺の身内が迷惑をかけてすまなかった。あとの事は心配するな。俺一人で君たちの教官を務められるよう、上と交渉する」
「交渉の必要はありません」
少し離れたところから聞こえてきた声に紗良が振り返ると、理事長が校舎の方からこちらへ向かって歩いてきていた。
「え、理事長先生……?」
意外な人物の登場に、紗良は目を丸くする。
「一瀬さん、怪我をさせられたようだね。大丈夫かい?」
「は、はい……」
紗良がそう答えると、理事長はニコリとほほ笑む。
「鷹岡先生、あなたの授業はつまらなかった。暴力でしか恐怖を与えることができないなら、その教師は三流以下だ」
理事長はポケットから紙を取り出すと、丸めて鷹岡先生の口に突っ込んだ。
「解雇通知です。以後あなたはここで教える事はできない。……それから、一瀬さんの怪我の治療費はあたたの給料から差し引いておきますので」
そう鷹岡に伝えると、理事長はくるりと背を向けて校舎の方へと歩いていく。
「椚ヶ丘中の教師の任命権は防衛省にはない。全て私の支配下だという事をお忘れなく」
そう言い残し、理事長は去って行った。
「くそ、くそおおおぉぉ!!!」
そして鷹岡も、悔しそうな顔を浮かべながら逃げるように走っていった。
「鷹岡、クビ……」
「ってことは今まで通り烏間先生が……」
「やったー!!」
みんな安堵と喜びの表情を浮かべる。
紗良もほっと息をついて、笑顔を浮かべた。
「よかったねー、紗良。治療費もらえるって」
「う、うーん。そんな大した怪我じゃないんだけど……」
「まぁいいじゃん。もらえるものはもらっとけば」
そんなこんなで、E組の体育教師はこれからも烏間先生が務めることとなった。
そして後日、治療費として銀行に10万円も振り込まれていて紗良は驚愕するのだった。
才能の時間 end
2016.6.10
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