04
渚はナイフを手に持ち、数メートルの距離を開けて鷹岡と向き合っている。
「あ、あのナイフって……本物……?」
渚が手にしているナイフは、いつも使っている対先生用のナイフとは違う、本物のナイフだ。
勝負の内容は、鷹岡は素手、渚はナイフ持って戦い、ナイフを当てるか寸止めすれば渚の勝ち、というものらしい。
しかし本物のナイフを使う訓練などしていないし、鷹岡は素手とはいえ、体格差から見ても勝負は決まっているようなものだ。
紗良は青ざめておろおろとしながらカルマを見上げる。
「ど、どうしようカルマ君、渚君が……!」
「落ち着いて、紗良。渚君なら大丈夫」
「で、でも……」
「渚君、アイツ相手に怯んでない。それに、いざとなったらタコが止めに入るよ」
「……うん」
紗良は心配そうな表情を浮かべたまま、その場で成り行きを見守った。
鷹岡は着ていた上着を脱ぐと「さぁ、来い!」と手招をきする。
渚は最初少しだけ戸惑っていたようだったが、やがてニコっと微笑むとナイフを降ろし、まるで通学路をあるくように普通に歩いて鷹岡の方へ近づいて行った。
その様子に、鷹岡も見ていた他の皆も一瞬きょとんとする。
そして鷹岡の腕に渚の胸がトンッと当たった。
その瞬間。
渚は勢い良く銀色のナイフを振り上げた。
鷹岡はギョッとしてナイフをかわす。
渚は体制を崩した鷹岡の服をひっぱり転倒させると、素早く背後に回り、鷹岡の首元にナイフをあてがった。
「捕まえた」
しん、と場が静まり返る。
見ていた誰もがその光景に愕然としていた。
こんな結末になるとは、誰も予想していなかったことだろう。
ただ殺せんせーだけは満足そうにニンマリと笑っていた。
「勝負ありですね、烏間先生」
そう言って殺先生は渚のナイフを取り上げ、バリバリと食べ始めた。
渚が、勝った。
その事実をようやく皆が認識し、わっと歓声があがる。
「やったじゃんか渚!!」
「ホッとしたよ、もー!!」
皆に囲まれている渚のもとへ、紗良とカルマも駆け寄っていった。
「やるじゃん、渚君」
そう言ってカルマは渚の背中をポンッと叩く。
「あ、カルマ君、見てたんだね。紗良ちゃんも……怪我は大丈夫?」
「大丈夫だよ。それより、鷹岡先生に勝っちゃうなんて、渚君すごいね! かっこよかった……!」
紗良が笑顔でそう伝えると、渚は少し恥ずかしそうに笑った。
「……あーあ。渚君の事は警戒しなくていいと思ってたのにな」
「カルマ君、何か言った?」
「なんでもなーい」
皆がわいわいと話していると、怒り狂った鷹岡が立ち上がり、渚の前に立ちはだかった。
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