03


一通り屋台を見て回り、花火大会の時間になった。

「カルマくん、どこ行くの?」

「人が少なくて見やすい場所〜」

紗良がカルマに手を引かれて連れてこられたのは、打ち上げ会場から少し離れた展望台だった。

「わぁ、すごい……!」

ドーンという音と共に、花火が夜空へ打ち上がる。
赤、青、緑と様々な色で夜を彩るそれは、まるで宝石のように輝いて見えた。

「きれい……」

今までにも花火は見たことはあったけれど、今日見る花火は一層特別なように思えた。
握る手に力を込めると、同じように握り返してくれて、心がじんわりと温かい気持ちになる。

「ねぇ、カルマ君」

紗良は隣にいるカルマを見た。

「……ん?」

「あのね……来年も、その次も、またこうやって2人で一緒に花火、見たいな」

そう言って微笑むと、カルマは一瞬驚いたように目を丸くしたあと、嬉しそうな笑みを浮かべて紗良の頭を撫でた。

「いいよ、約束」

小指を絡めて、指切りげんまん、と小さく歌った。
花火が終わった後も、2人で手を繋いだまましばらく夜景を眺めていた。
夜の風は少し冷たくて気持ちよくて、ふっと切なくなった。

「もう夏休み、終わっちゃうね……」

「あっという間だったね」

「色々あった夏休みだったけど、すごく楽しかったな」

「うん、俺も」

その時、カルマが何かを思い出したように「あ」と呟いた。

「夏休み、やり残したことが1個あるかも」

「やり残したこと……?」

紗良は不思議そうに首を傾げてカルマを見つめる。
カルマはそんな紗良の頬にそっと片手を添え、ふっと笑みを浮かべた。

「何だと思う?」

そう言いながら、カルマは紗良にゆっくりと顔を近づけ、距離を詰める。

「え、えっと……」

「ヒントは、紗良としたい事」

頬に添えていた手の親指が、その感触を確かめるように唇に触れた。

「……っ!」

恥ずかしくて目をそらしたいのに、そらすことが出来ない。
今にも触れそうな距離まで顔が近づいてきて、紗良はぎゅっと目をつぶった。

「真っ赤になって、りんご飴みたい。……いただきます」

そっと重なった唇はすぐに離れて、カルマは悪戯っぽく笑う。

「今日はこれで勘弁しといてあげる」

紗良は、さっきより更に顔を赤くして口をぱくぱくさせている。
そんな紗良を見て、カルマは満足気に微笑んだ。



夏祭りの時間 end

2023.1.31

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