01
それは、夏休みが終わる1週間ほど前のこと。
紗良は学秀に『話したいことがある』と呼び出されて駅近くのカフェへと来ていた
「学秀くん、話って?」
学秀は眉間にシワを寄せて紗良、の隣りに座っているカルマを睨みつけた。
「……毎回毎回、どうして赤羽もついてくるんだ!」
「俺が紗良の彼氏だから?」
「僕は認めてないからな」
「で、浅野クンは紗良に何の話があるの?」
学秀は咳払いをして、紗良の方へ向くと話を切り出した。
「……紗良、君に提案がある。E組を抜けてA組に入らないか?」
「え? A組に……?」
紗良は目を丸くして学秀を見た。
「例年、この時期に頑張った生徒にはE組を出るチャンスを与えられているんだ。君は生活態度も真面目だし、成績も順調に上がっている。本校舎に戻る資格のある生徒だ」
「でも、成績なら私よりも他のみんなのほうが……」
「生徒会長の僕が君を推薦するよ。そうすれば誰も文句は言えない」
「そんな提案に紗良が乗るわけないじゃん」
「僕は紗良に聞いてるんだ。紗良、A組に入ったほうが君のお母さんも安心するんじゃないかな?」
「……」
「それに、A組で良い成績を修めれば学費の免除も受けられる。母親に負担をかけたくないんだろう?」
紗良は俯いた。
(学秀くんの言う通り、A組に行ったほうがお母さんの心配も負担もへるかもしれない。だけど……)
紗良は顔を上げ、はっきりと告げた。
「ごめん、学秀くん。私、E組に居たい。E組のみんなと一緒に頑張りたいことがあるから」
「頑張りたいこと? A組のみんなと頑張ればいいだろう」
「ううん。E組じゃないと出来ないことなの」
それは、殺せんせーの暗殺だ。クラスの皆と一緒に成し遂げたいと思える目標だった。
「それに私E組の事が大好きなんだ。だから、E組を抜けるつもりはないよ」
「分からない……どう考えてもE組よりA組の方が君にとって良い環境のはずだ」
「……せっかく提案してくれたけどゴメンね。私の気持ちは変わらないよ」
「もうこんなチャンスは二度とないかもしれない。それでも良いのかい?」
「うん、大丈夫」
紗良は迷いのない目で頷いた。
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