03
あれから、イリーナは一度も学校へ来ていない。
「もう3日か……」
教室の空気は、どこか重たく沈んでいた。
「余計なことしちゃったのかな……」
紗良はあからさまに落ち込んだ表情で、机に視線を落とす。
「どうしよう……私たちのせいだよね……」
その声は小さく震えていた。
カルマが紗良の頭にぽん、と軽く手を乗せる。
「責任感じすぎだって」
「でも……」
「ほら、あれ見てみ?」
「え?」
カルマが指さす先には、そわそわと浮ついた様子の殺せんせーがいた。
手にはなぜかサッカーボールを抱えている。
わくわくした表情を隠しきれていない。
「イリーナ先生に動きがあったら呼んで下さい。先生これからブラジルまでサッカー観戦に行かなければ」
そして殺せんせーは、教室の窓からマッハで飛び出していってしまった。
「……」
紗良は呆然と殺せんせーを見送る。
「……殺せんせー、そんなサッカー好きだったっけ?」
「典型的な4年に1度のにわかファンだよ。普段は野球派」
皆が呆れ顔を浮かべる中、矢田がイリーナに電話をかけていた。
「う〜ん、携帯もつながんない」
「ビッチ先生、大丈夫かな」
「まさか……こんなんでバイバイとか無いよな」
不安がじわじわと広がってく。
――そのとき。
「そんなことはないよ。彼女にはまだやってもらうことがある」
教室にある人物が入ってきた。手には白い花束を抱えている。
その声はあまりにも自然に馴染んでいて、生徒たちは疑問を抱く間もなくそのまま会話を続ける。
「だよねー。なんだかんだいたら楽しいもん」
「そう。君たちと彼女の間には十分な絆ができている。それは下調べで確認済みだ。僕はそれを利用させてもらうだけ」
――利用?
ようやく違和感を感じる。
男は迷いのない足取りで教壇に上がると、手に持っていた花束を机の上に置いた。
全員の視線が教壇へ集まる。
いつの間にか、あの花屋のお兄さんが、E組の教壇に立っていた。
「!!?」
平然と、その人は教室に溶け込んできた。
男は静かに微笑むと、こう言った。
「僕は『死神』と呼ばれる殺し屋です。今から君たちに授業をしたいと思います」
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