02
「イリーナに誕生日の花束? 何故俺が? 君達が渡したほうが喜ぶだろう」
用意した花束を渡してもらおうとしたが、烏間は乗り気ではないようだ。
どう説得すべきかと皆が考えていると、カルマが前に出た。
「あのビッチが必要な戦力と思うならさあ、同僚の人心掌握も大事な仕事じゃないの? あ、俺達が花束用意したのはナイショね」
「……一理あるな。分かった、俺が渡そう。気遣い感謝する」
(カルマくん、ナイス……!)
紗良は心の中でガッツポーズを作った。
これで作戦どおりイリーナに誕生日プレゼントを渡してもらうことができそうだ。
イリーナを足止めしていた片岡たちの班へ、律から合図が送られる。数分後、少し不機嫌そうな足音と共に、イリーナが職員室へ戻ってきた。
「あーカラスマ!! 聞いてよ、ガキ共が……」
「丁度いいイリーナ。……誕生日、おめでとう」
烏間がイリーナに花束を差し出すと、イリーナは驚いた表情でそれを受け取る。
「うそ……あんたが?」
「遅れてすまなかったな。色々と忙しかった」
「やっば……超嬉しい。ありがと」
イリーナは頬を赤く染め、感動に瞳を潤ませている。
「あんたのくせに上出来よ。なんか企んでんじゃないでしょうね」
憎まれ口を叩きつつも嬉しそうに花束を抱きしめているイリーナ。
その様子を窓の外で息を潜めて観察していたE組一同は、作戦成功を確信して胸を撫で下ろした。……しかし。
「祝いたいのは本心だ。おそらくは、最初で最後の誕生祝いだしな」
「……何よ、最初で最後って」
「当然だ。任務を終えるか地球が終わるか、2つに1つ。どちらにせよ、あと半年もせず終わるんだ」
イリーナの表情がみるみる険しいものに変わっていく。
イリーナはヒールの音を荒々しく鳴らして窓際へ歩み寄ると、勢いよく窓を開け放った。
「あちゃー……」
「バレた……」
そこには、バツが悪そうに固まっている生徒たちの姿。
イリーナは冷たい目で生徒たちを見下ろした。
「……こんなことだろうと思ったわ。あの堅物が、誕生日に花贈るなんて思いつくはずないもんね」
イリーナは太ももに忍ばせていた銃を取り出すと、迷わず外へ向けて発砲した。
乾いた銃声が山に響き、現場に緊張が走る。
「楽しんでくれた? プロの殺し屋がガキ共のシナリオに踊らされて舞い上がってる姿見て」
「それは違いますよイリーナ先生。生徒たちは純粋な好意からあなたを……」
殺せんせーが割って入るが、カメラと取材メモを持った姿だったので逆効果だった。
「説得力ないわタコ記者!!」
イリーナは自嘲気味にふっと笑うと、抱えていた花束を烏間の胸元へ投げつけるように突き返した。
「おかげで目が覚めたわ。最高のプレゼントありがと」
彼女はそう言い残して、E組の校舎から去っていってしまったのだった。
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