08
「あー紗良の手料理楽しみだなー」
紗良とカルマの二人は並んで歩きながら、紗良の家へと向かっていた。
「……ねぇ、赤羽君」
「ん?」
「どうして急に呼び捨てなの……?」
今までちゃん付けで呼ばれていたのに、何故かさっきから急に"紗良"と呼び捨てにされている。なんだか照れくさい。
「いーじゃん。駄目?」
「別に駄目ではないけど……」
「じゃあ良いよね」
そういってニコっと笑うカルマ。
そんな風に楽しそうにされるともう何も言えまい。
「でさぁ、紗良」
「なあに? 赤羽君」
「その"赤羽君"って呼ぶのやめてくれない?」
「へ?」
紗良はきょとんとして目を瞬かせた。
「俺のことも下の名前で呼んでよ」
「……えっ!!」
「えって何。渚君とか浅野クンとかのことは普通に下の名前で呼んでるじゃん」
「そ、それは……渚君と学秀君は小さい頃から仲が良くて……」
「じゃあ俺とは仲良くないってこと? うっわ悲しー」
そう言ってカルマはわざとらしく悲しんで見せた。
紗良は慌てて弁解する。
「そ、そういう訳じゃなくて! 赤羽君とももちろん仲良いと思ってるよ!?」
「じゃあ、俺のことも名前で呼んでくれるよね?」
そう言ってカルマはにこりと笑う。
「急に呼び方変えるのは恥ずかしいよ……」
「そんなのすぐ慣れるって。カルマって呼び捨てにしてくれていーよ?」
「い、いきなり呼び捨てなんて……!」
「じゃあ君付けでいいからさ」
カルマは歩みを止めると、紗良の腕を掴み自分の方を向かせる。
「ほら、言ってみてよ」
「うぅ……」
紗良は恥ずかしくて俯いてしまう。
「ちゃんと目見て言わないと駄目だよ?」
そう言うとカルマは紗良の頬に手を添え、顔を上げさせた。
「……っ!」
紗良は一気に顔が熱くなるのを感じる。
名前を呼ぶのはただでさえ恥ずかしいのに、こんな風にされたらますます恥ずかしい。
とにかくこの状況から早く逃れたくて、紗良は意を決してカルマの名前を呼んだ。
「カ、カルマ君っ……!」
名前を呼ばれるとカルマは満足そうな笑みを浮かべ、紗良の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「じゃあこれからはそう呼んでね、紗良」
そう言うと、カルマはご機嫌な様子で再び歩き出した。
紗良も慌てて後に続く。
名前を呼ぶだけで喜んでくれるなら、多少恥ずかしくてもいくらでも呼んであげたい、そんな気持ちになった。
「……カルマ君」
「んー?」
顔の火照りはまだ引かない。
「これからも、仲良くしてね」
そう言って笑顔を向けると、カルマも嬉しそうに笑った。
名前を呼ぶ時間 end
2015.05.23
←prev next→
目次に戻る
ALICE+