07
そして放課後。
いつものように空き教室を借りて紗良は学秀と勉強に勤しんでいた。
「あ、そうだ。学秀君、今日は友達と約束があるから早めに終わってもいい?」
カルマは遅くなっても大丈夫だと言っていたが、長時間待たせるのも申し訳ない。
「僕は構わないよ。じゃあ、この問題を解いたら終わりにしようか」
「うん、ごめんね。ってこの問題、すごく難しそう……」
「大丈夫だよ。分かるようにちゃんと教えるから。解ける所まで解いてみて」
「うー頑張る……」
紗良は学秀に教わりながら、なんとかその難問を解くことができた。
「と、解けたぁ〜!」
「よく頑張ったね、紗良。お疲れさま」
「学秀君ありがとう」
「じゃあそろそろ切り上げようか。あんまり紗良の友達を待たせるのも悪いしね」
学秀はその友達がカルマだということはもちろん知らない。
「ごめんね学秀君、こっちの都合に合わせてもらって……。あ、ちょっと友達に電話かけてもいい?」
「あぁ、構わないよ」
紗良は鞄から携帯を取り出し電話をかける。相手はワンコールですぐに出た。
「あ、もしもし赤羽君? うん、勉強終わったよ。今どこにいるの?」
学秀は紗良の口から"赤羽"という単語が出てきたのを聞いて、ぴくりを眉を動かす。
その名前の人物に、一人だけ心当たりがあった。
「え、こっちに来てるの? うん、うん、分かった。じゃあ待ってるね」
そう言うと紗良は通話を切った。
「紗良」
通話が終わるやいなや、紗良は学秀に名前を呼ばれた。
「ん?どうしたの、学秀くん」
眉間に皺を寄せている学秀を見て、紗良は不思議そうに首を傾げる。
「今、"赤羽"っていう名前が聞こえたような気がしたんだが――」
その時、ガラガラっと教室の扉が開く音がして、紗良と学秀は音の聞こえた方に振り向いた。
「あーいたいた」
「赤羽君!」
そこにはカルマの姿があった。
「迎えに来たよ。早く帰ろ」
「うん、ちょっと待ってね。今荷物片付けるから」
そんな二人のやりとりを、学秀は怪訝そうな目で見やる。
「赤羽、業……」
「どーも。一応初めましてだね、浅野クン?」
2人とも学校では有名人なため、お互いの存在は知っていたが、話すのは初めてだった。
「そうだね、初めまして。ところで赤羽、どうして君が紗良と親しげに話しているんだい?」
「そりゃ、親しいからじゃない? なんか文句あんの?」
初対面なのにいきなり険悪な雰囲気だ。
「あ、あの、二人とも……?」
紗良は少し不安そうな様子で二人を交互に見る。
「紗良、まさかとは思うけど、友達っていうのは赤羽のこと?」
学秀は険しい顔で紗良にそう問いかけた。
「そ、そうだよ?」
紗良の返事を聞いて、学秀はため息をつく。
「……分かっているのか、紗良。彼は遅刻もさぼりも常習犯、おまけに喧嘩っ早い素行不良の問題児だぞ!?」
「ちょっと、本人がいる前で酷くない?」
とカルマが突っ込む。でも学秀は間違ったことは言っていない。
「うーん。でも赤羽君、意外と優しいところもあるんだよ? 最初は怖かったけど、助けてもらったこともあるし……。案外いい人だから、大丈夫だよ」
そう言って紗良はニコッと笑った。
紗良は友人であるカルマの事を信頼している様子で、そんな紗良に学秀はそれ以上何も言えなかった。
物騒な噂の絶えないカルマと紗良が友人同士など認められるはずがなかったが、無下に仲良くするなと言うことも出来ない。
カルマの方を横目で見ると、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
いつか絶対紗良から引き離してやる、と学秀は心に誓った。
「えっと、赤羽君待たせてるからそろそろ行くね。今日も勉強みてくれてありがとう」
「……分かった。だけど紗良、くれぐれも気をつけるんだよ。何かあったらすぐ僕に連絡を――」
「あーはいはい。もういいでしょ。"紗良"は貰ってくね」
学秀が話し終わる前に、カルマは紗良の腕をぐいっと掴んで引っ張っていった。
「わっ! じゃ、じゃあね、学秀君」
紗良はカルマに引っ張られながら学秀に手を振る。
学秀は少し引きつった笑顔で紗良に手を振り返した。
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