01


中学2年も終わりに近づき、春休みまであと少し。そんなある日の事。

紗良が学校から帰宅していると、路地裏から言い争うような声が聞こえてきた。
気になってこっそりとそちらを覗いてみると、そこに居たのは3年の生徒で、1人の生徒が複数人に取り囲まれていた。
会話内容から察するに、どうやらA組の生徒がE組の生徒をいじめているようだ。
”E組いじめ”はこの学校では良くあることだが、E組の生徒は複数人から一方的に暴力を受けているようで少し度が過ぎていると感じた。

ふと、E組行きになった渚の事が紗良の頭によぎった。
もしも渚が同じように虐められていたら――。
そう考えるといたたまれない気持ちになる。
もう見て見ぬふりはしたくないと思った。

(止めなきゃ……)

紗良はひとつ深呼吸をして、勇気を振り絞って一歩踏みだそうとした瞬間、後ろから何者かに腕を掴まれた。
びっくりして振り返ると、そこにはカルマの姿があった。

「カルマ君……!」

「俺が止めてくるよ。危ないから紗良はここで待ってて」

カルマはそう言い残し、すたすたとその現場に近づいていった。

「ま、待って私も……!」

紗良も遅れて後を追う。

「何してんの? 先輩」

カルマは虐めているA組の生徒達の前に立つと、そう声をかけた。

「大丈夫ですか?」

紗良は虐められていた生徒の方に駆け寄る。
3年のA組の生徒たちは不満そうな表情を浮かべた。

「なんなんだよお前ら、邪魔すんじゃねーよ」

「文句あるならかかってくれば? 俺が相手してあげるから」

カルマが挑発すると、A組の生徒は殴りかかってきた。
しかしカルマはそれを軽々とかわし、次々と返り討ちにしていく。

(カ、カルマ君強い……)

3年のA組の生徒たちはあっというまにカルマにボコボコにされ、逃げるように去って行った。
E組の生徒は少し驚いたような表情をして呆然としていた。
まさかE組の自分が助けられるとは思っていなかったのだろう。

「大丈夫でしたか……?」

「あ、あぁ。どうも、ありがとう……」

お礼を言うとE組の生徒もそそくさとその場を後にした。
その後姿を眺めながら、カルマが呟く。

「大変だね、E組ってだけで因縁付けられて」

「うん……。渚君は、大丈夫かなぁ」

「渚君も心配だけど、俺は紗良の方が心配だよ」

「え?」

「さっき一人で飛び出していこうとしてたでしょ」

「だ、だって……」

「駄目だよ危ないから。それに紗良が出て行っても被害者が一人増えるだけだって」

「うぅ……否定出来ない……」

そんな事を話しながら、紗良とカルマは家に帰って行った。
今日の出来事が、この先2人に大きな変化をもたらすことになるとは知らずに……。

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