02
翌日、紗良とカルマの2人は職員室に呼び出された。
「お前ら、A組の生徒に暴力を振るったそうじゃないか」
カルマの担任である大野がイライラとした口調でそう言った。
大野は成績の良いカルマを気に入っており、いつもであれば多少の喧嘩は目をつぶってくれていたが、今回は話が違う。
昨日カルマが殴って怪我を負わせた生徒は3年の成績トップの生徒だったのだ。
あの時紗良は見ていただけで何もしていないのだが、共犯ということにされてしまっているらしく一緒に怒られていた。
「こんな大怪我を負わせて、いったいどういうつもりなんだ!」
大野がバン!と机を思いっきり叩き、紗良はびくりと肩を震わせた。
カルマは臆する事なく大野に反論する。
「だけど、悪いのは向こうだよ? あいつら、大勢でE組の先輩を虐めてた。それを助けて何が悪いの?」
紗良も、こくこくと頷いて同意する。
「先生、E組の先輩もA組の人たちに殴られていたんです。あのまま放おっておいたらもっと酷いことになっていたと思います」
紗良は大野にそう訴えた。
「あと、紗良は何も手を出してないよ。やったのは全部俺だから」
カルマは紗良をかばうようにしてそう言った。
「けどさ、俺は間違ったことしてないよね? 先生」
カルマは自分のしたことは正しいと、そう信じていた。
大野もそれを理解してくれるはずだと思っていた。
――しかし。
「いいや赤羽、どう見てもお前が悪い」
返ってきた言葉に、カルマは絶句した。
「頭おかしいのかお前! E組なんぞの肩をもって3年トップの優等生に重症を負わすとは!」
カルマは以前大野に言われた言葉を思い出していた。
"お前が正しい限り、先生はいつでもお前の味方だ"
しかし、そんな言葉には何の意味もなかった。
「もし彼の受験に影響が出たら、俺の責任になるんだぞ!」
結局大野にとって大事なのは、自分自身なのだ。
カルマは、大野に対して絶望していくのを感じた。
大野という人間が、カルマの中で死んでいく。
「赤羽、お前は成績だけは正しかった。だからいつも庇ってやったが、俺の評価に傷がつくなら話が別だ。一瀬は成績もあまり良くなかったみたいだがな」
「……」
紗良は黙ってしまったカルマを横目で見る。
その瞳は、怒りや悲しみが入り混じったような色をしていて、じっと前を見ているカルマの目には大野の姿が映っているはずなのに、まるで誰もいないかのように宙を見つめているような感じに見えた。
いつもと違うカルマの様子に、紗良は妙な胸騒ぎを覚える。
大野は嘲るような笑みを浮かべると、紗良とカルマにこう告げた。
「おめでとう、お前ら2人は春からE組行きだ」
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