知りたい気持ち
今日は、快晴。
そして、私の心も同様に快晴だ。
「ユキ、早く行くよ!!」
「お姉ちゃん張り切りすぎー」
妹を急かしていると、呆れた声でそう言われてしまった。
今日は久々に貴澄君に会えるということで、私の心は浮き足立っていた。
成績不振の為スイミングクラブへ行くことを禁止されてしまった私だったが、貴澄君に会いたい一心で、それはもう必死に勉強を頑張った。
そして小テストで満点をとり母を説得して、これからも勉強を頑張ることを条件に妹をスイミングクラブに送迎する権利を奪還したのだった。
浮かれすぎて妹に呆れられてしまったので、私はなるべく気持ちを落ち着かせながら、スイミングクラブへと向かった。
***
スイミングクラブに到着すると貴澄君と颯斗君の姿を見つけた。
彼らもちょうど今来たところのようで、貴澄君はこちらに気づくと笑顔を向けてくれる。
久しぶりに見る貴澄君の笑顔に胸がぎゅっと締め付けられる。
颯斗君も小さく手を振ってくれた。
私はユキを連れて、2人のもとに駆け寄って行った。
「貴澄君! それに、颯斗君も、久しぶり!」
「ほんと久しぶりだね。最近結衣ちゃん見かけないから、どうしたのかなって思ってたんだ」
「えっと、ちょっと色々忙しくって……あはは……」
「そうなの?」
私は目を泳がせながら苦笑いを浮かべる。
「お姉ちゃんはねー、テストの点が悪くてお母さんに勉強させられてたんだよ」
わざわざ濁して答えたと言うのに、知られたくない真実を無邪気に暴露するユキに、私は頬を引きつらせる。
「ち、違うの! たまたまちょっといつもより調子が悪かっただけで……!」
貴澄君に馬鹿だと思われたくなくて慌てて弁解するも、そんな私を見て貴澄君はきょとんとした後、ふふっと笑った。
絶対馬鹿な奴だと思われてしまった。ユキのせいだ。
心のなかでガックリと肩を落としていると、貴澄君が口を開いた。
「でも、良かった」
「え?」
「結衣ちゃんがスイミングクラブに来なくなっちゃったから、もしかして僕何か嫌われるようなことしちゃったのかなって、心配してたんだ」
「そ、そんな訳ない!! 私が貴澄君のこと嫌いになることなんて、絶対ないよっ!!」
勢い良くそう言ってしまって、貴澄君は少し驚いたように目を丸くしている。
そしてまたユキが余計なことを言い出した。
「お姉ちゃんは、貴澄君お兄ちゃんのこと大好きだもんね」
「―――っ!!」
私はユキの口を慌てて手で塞いで「お願いだから黙ってて!」と念を推した。
「だ、大好きっていうのはその……! 友達としてって言う意味で……!」
思わずそう言ってしまったものの、友達としてなんて大ウソだ。
でもこんな状況で告白なんてできるわけがないし、好きだなんて言って貴澄君を困らせたくない。
「大丈夫だよ、そんなに慌てなくても」
貴澄君は特別気にした様子もなくそう言った。
それはそれで少し寂しいな、なんて。
そんなことを思っていると「けど……」と貴澄君が付け足す。
「友達として、かあ。ちょっと残念だなあ」
「え」
「……なんてね」
そう言って、貴澄君は小さく舌を出す。
貴澄君の発言に、私は呆然として固まったまま目を瞬かせる。
「貴澄君お兄ちゃんも、結衣お姉ちゃんのこと大好きだよね」
まさかの隼人くんが貴澄君を見上げてとんでもない質問をする。
「そうだね。大好きだよ」
貴澄君は笑ってそう答えた。
私はもういっぱいいっぱいで、頭がどうにかなりそうだ。
その「好き」はどういう意味なのか、なんて、聞けるはずもなかった。
2017.04.23
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