noise canceller
「狽ハおぉぉぉっ!!時子さん何してくれてんだぁぁぁっ!!」
時子さん(猫)がテレビを派手にひっくり返して壊れました。
や、どうしたらモニターにヒビ入るのかオレが知りたい。
Channel:01
「はぁ〜…、安いやつねえかなー…」
学校の帰り、ジュネスの電化製品コーナーでテレビとにらめっこしてるオレ。
何でモニターにヒビはいんだよ、たく…。
「あれー、加宮じゃん」
「おーっす、なんだよ。千枝に転校生もお揃いじゃん、花村は空気にするとして」
「買Iマエおれの扱いひどくねっ!?」
「あははっ」
わざとらしく辛口をいうと千枝が腹を抱えて、転校生―――瀬多 総司も笑った。
つい最近、八十稲葉高校のうちのクラスに転校してきた奴だ。
「加宮はここで何を?」
「おー、聞いちまう?それがさぁ、飼ってる猫が派手にテレビひっくり返してな」
「えっ、どうやって?」
オレが聞きたい。
“そういうお前らこそ何やってんだよ”と聞くと、里中が。
「あたしも似たようなもんだよ」
カンフー映画を大画面で見たくってさー、と彼女は得意の格闘の構えをとる。
里中はカンフーマニアで、休みの日や暇な時はその動きを真似るべく訓練してるらしい。その格闘技に対する情熱はなかなかである。
それから少し花村と里中が画面を触ると、“やっぱり”と二人で笑った。何がやっぱり?
「オレら、噂の“マヨナカテレビ”ってヤツ試したんだけどさ」
―――マヨナカテレビ。
町で、というか多分主に学生あたりが多いんだろうが、“雨の日の午前零時にテレビを見つめると運命の人が映る”らしい。
所謂他愛のない、信憑性のない、単なる噂。
試すヤツはそれなりにいるらしく、数日前に生田目という政治家と不倫した山野女子アナが“運命の人だっ!”と叫んでいるヤツがいた。
最も山野女子アナはこの町で、アンテナに引っ掛かった状態で遺体となって発見されているから、有り得ないわけだが。
「瀬多くん、画面に触ったら手が入っちゃったんだって」
有り得ないよね〜、と里中が笑った。突き抜けちまうよ、という花村と一緒にすぐ近くのテレビを見に行った。
テレビに触ったら手を突っ込んだ、か…。ちらっと瀬多を見る、それから俺も触ってみた。
…俺も無理だ、ちっ。←
「うーん、俺できないな。面白くねー」
「ははっ、まあ…普通はそうだ」
ちょっと残念な気がしてならない、と零すと瀬多は苦笑いした。“別に試さなくても”と続けた転校生に、俺はいやいやと首を振る。
「アンタ、必要ない嘘つくようには見えねーし。これくらい画面でかけりゃ入りそうじゃね?」
「確かに」
少しだけ嬉しそうに瀬多がモノは試しと触れてみた。
すると、
「!!」
「……おー」
瀬多の右手が手首まで入った、思わず裏側を見てみる。うん、突き抜けてないな。
まるで水面が波打つように、瀬多の手首を中心に揺れている。
「わんだふぉー」
「わんだふぉー、じゃねぇよ加宮っ!!」
「ちょ、どうなってんのっ!?」
あれ、お前ら戻ってきんか?
とか、思ってたら瀬多は自分から手首だけじゃなく体半分テレビに入った。
つわものだなオイ。
「…空間がある、しかも広いな」
止せと叫ぶ花村や感心するようにすげーと連呼する里中を余所に、瀬多は淡々とコメントを零す。
「く、空間って何!?」
「広いって何っ!?」
「ってか何っ!?」
「お前らうっさいわ」
冷静になれよ、冷静に。そして、声がでかすぎる。
やれやれと額に手を当てる、ついには驚きのあまり“漏れる!”とダッシュしていった。が、これまたダッシュで逆走してきた。
「客来る、客!客!!」
「狽ヲぇっ!?ここにテレビに身体半分刺さってる人がいんですけどっ!!」
どうしよう…!!と慌てふためく里中と未だ“漏れる”と客で混乱する花村。ついには二人揃って走りだしてる。
「瀬多、客来るからとりあ…」
―――どんっ。
あれ、落ちんのオレら。