noise canceller
「う…っ!?」
「がっ!?」
「きゃっ!?」
―――すたっ。
「お前らぶざまー」
「何でお前は着地できんの加宮サンッ!?」
はい、読者の皆様。こんにちは、もしくはこんばんは。加宮 斎でーす。
えっと…、まず何からいくか。そう、ジュネス家電売り場でテレビ見てて〜瀬多がテレビに突っ込んで〜…落ちた。
あ、どこにとか突っ込むなよ。文字通りテレビの中だからな。
とりあえずは、だ。
「怪我は?」
「若干ケツ割れた…」
「もともとだろが!」
全員、無事みたいだ。つか、花村も里中も漫才するだけ元気みたいだな。
いや、瀬多。止めろよ、傍観してないで。
にしても、ここは何処だろうなー…。スタジオみてーだけど、ジュネスにこんなトコねぇし。
霧は濃いから視界悪いし、それになんだ。この空気っつか、フインキっつか、どっかで…―――。
「加宮、陽介達が“出口探そう”って」
「りょーかい〜」
Channel:02
「視界わるー」
「文句言うなって」
言いたくもなるって、結構歩いた気がすっけど疲れてきたぞ。
あー時子さんに会いたいぜー…。
「…ん?この辺霧薄くないか?」
「というより、部屋みたいだな…」
部屋…、まさか人が住んでるとか?
有り得ない可能性を考えつつ瀬多に続いて俺も入った。
ほう、ベッドに観葉植物っぽいのがあるな。あと椅子も、けど―――。
「里中、お前は入んな。ドアんトコにいろ」
「へっ?何で?」
俺が里中に足を止めるように告げると、もちろん彼女は理由を知らない訳だから不思議そうに目を丸くした。
だってそうだろ、普通そうするだろ?
―――赤いインクまみれで顔だけ切り抜かれたポスターだらけの壁なんて、女の子に見せるもんじゃないだろ?
「趣味わるっ」
赤インクの散布具合が飛び散った血液みてぇ、気持ち悪いな正直…。
よっぽど、ポスターに描かれていた人物は恨まれていたと汲み取れた。
「…出よう、来た道を戻るんだ」
「賛成。里中、大丈夫か?」
「う、うん」
瀬多が提案した通り、俺達は来た道を戻っていく。結局、最初に落ちたステージみてぇな場所に戻ったワケだが。
「…なんかぷりちーな生き物がいる」
「生き物っていうか、クマ?ナニモンだコイツ」
「き、キミ等こそ誰クマ?」
おぉ喋った!
ってか、語尾すらクマか。何ともカラフルなクマだな、なんていう種類のクマだ?
「…加宮、全部口に出てる」
「あれ」
なんでだろうな、と軽いツッコミを入れた勢多に振ると“オレに聞かれても”と困ったように首を傾げた。
「で、君は誰?ここは何処?」
「ココはココ、名前なんてないクマ。クマ、ずっとココにひとり住んでるクマよ」
勢多が尋ねると、どうやら着ぐるみではないクマが答えた。つか、名前まんまクマかよ。ひねりねーな、オイ。“とにかくキミたちは早くあっちに帰るクマ”と急に騒ぎだした。
「最近誰かがココに人を放り込むから、クマ迷惑してるクマよ!」
誰の仕業か知らないけどアッチの人にも少しは考えてほしいって言ってんの!
だんだんと床を蹴りながらそう主張するクマに、遂に苛立ちを募らせたのは里中だった。
「ちょっといきなり出てきてなんなワケ?あんた誰よ、ココ何処よ!?」
「さ、さっきも言ったクマよ…」
“何がどうなってんの!?”と当たり散らす里中の声のでかさと勢いに負けたクマは、遂に勢多の後ろに隠れた。
「要は此処からでてけって事だろ?俺らだってそうしたいんだよ」
「クマは出口知らないか?俺達、ずっと探してるんだ」
「ムキーッ!だからクマが出すっつってんの!」
言ってない。言ってない。
多分一言も言ってないからな、クマ太郎(白Nだよ)
クマが軽くとんとんと床を蹴るとモニターがピンク色のテレビが何台か積まれた状態で出現した。
成る程、此処から帰れるのか。
「さー行って行って行ってクマ、ボクは忙しいクマだクマ!」
「押すな!入らないって!!」
「わっ」
****
“ただいまより一階お惣菜売り場にて恒例のタイムサービスを行います
今夜のおかずにもう一品、ジュネスの朝採り山菜セット
ヤングもシニアのお見逃しのないようお得なタイムサービスをご利用下さい”
「…戻ってきた?」
「らしいな、つか花村。さっさとどけ、吊すぞ」
どういう訳かオレの上にかぶさってきたままでいるもんで“お前重たいんだよ”と少し低い口調で言うと、ささっと青ざめた花村は立ち上がった。何を、はあえて聞かないように。
もうタイムサービスをやるような時間だったんか、早いな。
あ、と花村が思い出したように声を上げた。
「見ろよ、あのポスター。向こうで見た顔切り抜かれたやつ」
「あぁ、演歌歌手の柊みすずのポスターか」
勢多が納得したように続けた。
確かつい最近テレビで議員秘書の旦那が山野アナと浮気とかで、結構話題になってたな。
「わーわーやめやめ!やめようぜこの話!」
「いや、最初に振ったのお前だし」
“ハート的に無理だから、うん”と花村は忘れる事にしたらしい、何だか晴れない空気のまま解散する事になった。
「…今日の俺、テレビなしかよ」
「…諦めよう」
ぽんと瀬多が肩に手を置いた。
とりあえず、欲しいテレビ適当に選んで宅配頼んだら帰ろう。