意外な同期が見慣れないメンツで試験会場にいるのを違和感を覚えながら眺めた。隣には以前火影室でカカシ先生と抱き合っていた女がいる。両手を擦り合わせるそいつに仕方ないと言うような顔で話しかけるサスケはひどく優しい表情をしていた。先日、泣きながら火影室にやって来たそいつの妻を思い出して、こんな所で何してんだよ、と苛立ちが込み上げるのが分かった。俺とナルトの姿が目に入ったのか、女に顔を近づけて何か言うと席を立ってこちらにやって来た。
「よぉ。」
「おぅ!サスケも来てたのかってばよ。」
ナルトがいつも通り声をかける。
「あぁ。カカシのお守りも今日は休みか。」
「まぁ、こんな日はな。」
話の合間にもチラリと視線をどこかに向けるサスケ。目線を追うと、やはり先ほどまでそいつがいた場所で、愛おしそうに彼女を見つめている。火影室で会った時、普通に綺麗な人だと思ったその女は、遠目からでもたしかに綺麗だと思う。少しお洒落しいて同年代にいたら普通にモテるんだろうなと思わせる容姿だった。サスケよろしく青みがかった長い黒髪は癖一つなくて、動きやすそうなラフな格好に映える化粧が母親には到底見えなかった。
「誰だってばよ?」
ナルトも気付いたのか声をかける。
「教え子の母親。長男が戦う姿初めてみるらしくて、見てて痛々しいくらい緊張してんだよ。」
そう言って綺麗に笑った顔に、イノやサクラがキャーキャー言ってた頃を思い出す。こいつの顔は男から見ても整っている。そんなこいつと並んでも違和感ないだろうと思わせる程、彼女も容姿が良かった。サクラが不安に思うのも無理ねーな、と1人納得する。
「母親、って俺らと見た目変わんねーってばよ。」
「実際同い年だ。」
え、と声をあげたナルトは、年齢を逆算でもしているのかうんうんと唸っている。
「苗字って、サツキの母親って、あいつかよ。」
「アカデミーには通ってなかったからな。そういやあんまり知り合いいねーってボヤいてたっけ。」
昔から知っている、と言うような口調でそう言う姿に、ただ息子の修行をつけてるだけって訳じゃなさそうだな、と思う。視線に気付いたのか、不服そうな視線を返された。
「あ、ナンパされてるってばよ。」
ナルトの声に視線の先を辿ると、隣の青年に声をかけられているのが見える。慣れているのか、愛想のいい笑顔で青年と談笑しながらも少し距離をとっているのが見えた。
「今日サクラは?」
ずっとそちらを見るサスケにそう問う。
「イノたちと観るらしい。」
「そうかよ。」
何でもないように言われたのが、家庭を大事にしていない発言に聞こえてムッとする。そもそもほとんど家に、里に、いないんだろ、お前。たまに帰って来たときくらい、心配させるなよ。先日任務とサクラの板挟みになったと相談しに来たことを思い出す。余程不服そうに見ていたのか、チラリとこちらを見られた。しかし、じゃあまたな、と言って席に戻っていく。ナンパ男が彼女にボディタッチをしているのが見えた。さすがに困ったのか笑顔を少し歪めているが、それぐらいじゃそいつは怯まねぇだろ、と思わされる。まぁ、確かに、放って置けねぇ奴かもな、とそそくさと彼女と男の間に割り込むサスケを見て思う。そしてふと、彼女を大事そうに抱きしめて*を緩めたカカシ先生を思い出す。あぁ言うのを魔性の女って言うんだろうな。隣に戻って来たサスケの耳元に口を寄せて何か呟いた彼女に、サスケが嬉しそうに答える。
「サスケの弟子、押されてるってばよ。」
ナルトの声が聞こえて、会場を見るとだんだん苦しくなる試合運びが見えた。他の観客も大注目のルーキーの様子に声をあげている。心配そうにする彼女の肩をそっと抱くサスケの姿が目に入る。下から見上げるようにその顔を一度見てから、会場へ目線を戻す女。もうこれ、結構真っ黒なんじゃねーのかな、と溜息を吐く。せめてサクラが見てないといいな、と密かに願った。サスケが何かに小さく頷くのが見えた次の瞬間、周りがどよめく。
「あれ、写輪眼じゃねーか?」
どこからか聞こえた声に、一瞬嫌な想像が頭を過る。勝者 苗字サツキの掛け声が響き、会場全体が歓声をあげる。
「おお!すげーってばよ!」
純粋に喜ぶナルトの声がやけに遠くに聞こえる。観客の鳴り止まない拍手喝さいの中、女がまた耳元に口を寄せて何か言う。その言葉にサスケが不敵に笑って、彼女が拗ねたようなあどけない笑顔を向ける。まさかな、と自分で自分を落ち着かせる。まさか、父親なんてこたぁねーだろうな、めんどくせぇ。