カカシ先生に用があったらしく、中忍試験を一緒に見ていたあの女とサスケが火影室の前に来ていた。
「サスケ、後でちょっといいか?」
「?あぁ。」
その様子をキョトンとして大きな目で見た彼女はノックしようと伸ばした手をそのままに固まっていた。
「終わったら声掛けてくれ。」
その場を後にすると、少ししてから火影室のドアがノックされ、どーぞ、とカカシ先生の声が聞こえた。
「シカマル。」
控え室で待っていると声をかけられる。ちょうど人が出払っていて、俺とサスケだけだった。バタンとしまったドアを見て、まぁ座れよ、と声を掛ける。
「どうした?」
見当がつかないのか、腰掛けながら用件を訊ねられる。
「お前、サクラと会ってるかのよ?」
中忍試験会場で感じた違和感を思い出しながら問いかけると、気まずそうに目線を逸らされる。
「最近は、会えてない、な。」
「やっぱりか。」
「サツキの中忍試験も迫ってたし、家が少々複雑だってことはあいつも分かってる。」
「そう、サクラが言ったのか?」
「…まぁ。」
「で、なんで会えてねーんだよ。」
「?どうした、珍しいな。お前が人ん家の事情詮索するの。」
軽く不機嫌になる姿に、お前が前に相談してきたから心配してやってんだろ、と返す。
「そうか。悪いな。」
全然悪びれもせずそう言われる。
「まぁ、なんていうか、あいつ、実家に帰ってる。」
「は?」
「だから、会えてねー。」
「お前、それ、」
「まずいよな。」
「自覚はあるのかよ。」
はぁと溜息を吐くと困ったように眉を下げられる。
「原因、一つしかねーだろ。」
「確かに、サツキに付きっ切りであんまり時間割いてやれなかったのは反省してる。」
「そっちじゃなくて。」
「?他に何があんだよ。」
マジで分かってないらしい姿にいよいよ呆れる。なんだよ、モテまくるとそういう感覚、全部麻痺すんのか?
「母ちゃんの方だろ。ガキじゃなくて。」
「カカシから聞いたのかよ?」
「は?何をだよ?」
しまったという顔をするそいつに何かあるな、と思い至る。俺の勘は正しかったらしい。
「何だよ?カカシ先生は知ってんのか?あの女とお前が不倫してんの。」
「な、そんなことしてねーよ。」
「てか、あの女、カカシ先生も誑かしてんだろ?お前、気をつけた方がいいんじゃねーの?」
「名前はそんなことしてねー。」
完全に誑かされてる奴の発言じゃねーか、と思うけど、本人が気づいていないようなので、仕方ない。話はそれだけなら帰るぞ、と言って出入り口へと向かう背中に慌てて投げかける。
「実家に帰ってんなら、迎えに行ってやれよ!」
聞こえてるのか聞こえてないのか、バタンと一段と大きく音を立ててドアが閉まった。