今日は早めに終わったので戦術班の元へ向かうと目当ての人物は休憩を取っていると言われた。なんとなく屋上に向かうと話し声が聞こえて来る。当たりか。足取りが軽くなる。ドアを開こうとした時他の人の声がして咄嗟に手を止めた。サスケだ。何故か入って行けなかった。
「火影様、納得してくれたよ。」
「体張った甲斐あったな。」
提案してたのはサスケに教わった陣形だったのか。自分の心配をよそに本当に戦術を知りたくて会っていたらしい。親父が言ったという、俺は独占欲が強いという表現も間違ってなさそうだ。苦笑せざるを得ない。
「シカマルとは仲直りできたのか?」
「お陰様で。」
「やっと子守から解放されるか。」
「…大変お世話になりました。」
「お前ら似た者同士なんだからお互いの事一番分かってんだろ?頭も良いんだし上手くやれよ。」
俺との事を相談していたのか。不思議と荒れ狂った心が落ち着いていく。
「そういうの宝の持ち腐れって言うんだぜ。」
サスケが言うのがやけに近くで聞こえた。気付けば気配がもうドアの近くにある。
「そうは問屋が卸さないから困ってたんですけど。」
苗字の言葉が届き終わる前にガチャリと入り口が開いた。目の前に居たのは面を付けてない同期の姿で、意地悪そうに笑っている。睨んでやるとくつくつと笑われた。
「よかったな、愛しの旦那の迎えだぞ。」
「え?、奈良?いつのまに、」
サスケの後ろから寄って来た苗字が恥ずかしそうにしている。
「じゃあな。あ、名前、礼ならこの前言った物なら何でもいいぜ?」
「…それで大人しく付き合ってくれたのか。意外と抜け目ないね。」
フンと笑うと俺の肩にポンと手を置き面を付けた。
「手綱ちゃんと握ってろ。毎回押し掛けられたら迷惑だ。」
俺にだけ聞こえるようにそう言って瞬身で消えた。迷惑だと言いつつ迷惑そうではなかったのが実は仲間思いなサスケらしいと思った。
「何強請られたんだよ。」
「ハイテク家電。」
「へぇ。」
折角なので屋上に足を踏み入れると彼女もついてきた。沈黙が流れる。先に口を開いたのは向こうだった。
「…任務中時間あったから、奈良とのこと聞いて貰ってた。」
「二週間も時間あったもんな。」
思わず噛み付いてしまう。
「他にも二人いたからね?」
「わーってるよ。」
頭をガシガシと掻く。嫉妬心剥き出し。余裕がないのが明白で恥ずかしかった。
「サスケ、思った事キッパリ言ってくれるから、色々勉強になった。」
「例えば?」
「皆が皆同じ考え方だと思うなよ、とか、話飛んでんだよ途中どこ行ったんだ、とか。」
「…貴重な存在だな。」
本心でそう言うと吹き出して笑われた。
「あと、シカマルが一歩引かずにガチで接してんのお前以外に見た事ない、って。」
「アイツそんな風に思ってたのか。」
「いい同期だね。」
おだやかな顔をしていた。此奴には同期みたいな存在がいないと言っていたから羨ましいのかもしれない。
「イノによ、もっと優しくしねーと逃げられるぞって脅された。」
「紳士は幼馴染の英才教育のお陰もあったんだ?」
「かもな。」
「優しくされたら手加減されてるみたいで気が気じゃないよ、たぶん。」
「それ聞いて安心した。」
くすくすと笑ってドアの方へと向かう姿をぼんやりと眺める。
「じゃあ、私そろそろ戻らないと。」
「あぁ。」
「奈良もう終わり?」
「珍しくな。」
「晩御飯、ウチで食べる?」
こちらを見ずに言われた言葉をゆっくりと反芻する。間が空いてしまったからか彼女が慌てたように此方を振り返って続ける。
「あ、都合悪いんだったら大丈夫。聞いてみただけだから。」
「悪くねぇ。てか逆に良いのかよ。」
「?何が?」
家一人暮らしだし気にしなくて良いよ、と言われ複雑な気分になる。鈍感なのか全く警戒されていないのか。それとも心を許してくれてるんだろうか。
「じゃあ邪魔する。」
「分かった。先に家入ってる?」
チャラリと銀色の鍵を揺らしながらそう問うてくる姿にため息が一つ溢れた。家主のいない家に、しかも女の一人暮らしの家に勝手にあがってる訳にはいかねーだろ。
「、お前、里の警備見直す暇あったら自分ん家の安全確保しろ。」
「奈良だから聞いたのに。じゃあ18時以降だったら帰ってると思うから、いつでも来て。」
俺の返事にふんわりと笑って歩き去った姿が瞼の裏に焼き付いた。いつだったか、負けたことはないと豪語したけど、結局いつもアイツの描いた筋書き通りに進んでいる気がする。屋上から見えた沈みかけの夕日がやけに眩しかった。