「可愛い」の呪い

強くなりたかった。
一人でも生きていけるように、強くなければいけなかった。
記憶の中で殴られて泣いているのはいつも女性だったから、男のように振る舞うのが、私にとっての強くなるおまじないだった。
本当は可愛いものが好きだった。
フリルがたくさん付いたワンピースも、オフショルダーの洋服も。
それらを、好きなものを全部捨てて強くなろうと足掻いた。
そのせいだろうか。
「可愛い」は呪いのように感じた。
私は可愛いものが好きだった。
自分は「可愛い」になりきれなかった。
それでも、可愛いものが好きだった。
美しいものも、か弱いものも、可愛らしいものも、華奢なものも、全てが愛らしくて守りたくなった。
自分はそれになりきれなかった。
可愛いものが好きだった。
でも「可愛い」は避けてきた。
本当は可愛くなりたかった。
男のように振る舞うことが当たり前だったから、「可愛い」と言われたことはなかった。
だから、私は知らなかった。
他人から貰う「可愛い」というたった一言が、こんなに嬉しいと感じるなんて。

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