夕暮れ。図書室──と呼ぶには少し広すぎる、校内の図書館に差し込む夕焼けが、ずらりと立ち並ぶ本棚をオレンジ色に染める。くあ、と本日数回目のあくびをして、だらだらと回る時計の針をにらんだ。
学校で用事がないなら早く帰りたい私だけど、委員会があるのでそうもいかない。といっても、図書委員は本の貸出手続きくらいしかやることがないので楽なものだけど。
図書館の閉館時間まであと三十分。座ってただ待つには暇だし、かといって携帯をいじるのも、一応仕事中の身だし憚られる。
こうなったら仕方ないと思って、何度目かの勇気を振り絞って、立ち上がりながら、隣に座っていた同じクラスの図書委員の子に声をかける。
「あ、あの、私、本の整理してくる。人が来たら対応しておいてもらってもいいかな…」
とはいえ、この時間はもう部活が始まっているので、誰も来ないと思うけど。
「……うっす」
彼の返事を聞いて、ありがとう、と言ってその場を離れた。沈黙が苦な相手は嫌いな人くらいなので、あのクラスメイトくんとの沈黙はなんとも思わないけど。向こうが気まずく思ってたら申し訳ないし、座ってるのもの暇だし。
ということで、私は端の本棚から、本をあいうえお順に並べ直すことにした。これが結構乱れていて、図書館の本全てを整理するのはかなり骨だ。何しろ、ここはとても広い。図書室というより図書館だし、図書館というより資料庫だ。
上の方の段は届かないことがわかりきっているので、あらかじめ踏み台を持って移動する。本を抜いて、しまって。抜いて、しまって。その作業を淡々と繰り返すのは、思ったより楽しかった。
「……あのー」
不意に、背後から声をかけられて、驚いて振り返る。
そこには、クラスメイトの子が立っていた。
「もう閉めるみたいっす」
「えっ」
慌てて時計を見ると、いつのまにか閉館時刻を少し過ぎていた。しまった、集中しすぎた。
「ごっ、ごめんなさい、時計見てなくて」
「あー、いや、俺の方こそ…」
目を逸らして頭の後ろをかいた彼の言いたいことがよくわからなくて、私は覚えず首を傾げる。
「仕事、任せっきりにしちまったんで」
一瞬、すごくびっくりして。それから冷静になった頭で、ああ、ちょっとだけ、私と似てるなあと思ってしまった。
「君が気にすることじゃ…私がやるって言い出したんだし。君は受付見ててくれてたし」
「……あの時間人が来ないのはお互いわかってたことでしょ」
わ、悪いことをしただろうか。次からは、協力してもらった方がいいんだろうか。いやでも、たぶん彼が言いたいのは、仕事やらせてごめんってだけで、私に対しての怒りとか苛立ちはない、と、思う。たぶん。
「ほらほらお二人さん、閉めるよー」
司書の先生の声が聞こえて、慌ててふたりで受付の方に戻った。そうやって、もう帰るまでなにも話さないまま、今日のことはうやむやになった。別に喧嘩をしたわけじゃないのに、もやもやして気持ちが悪かった。