01


流星街。
そこは何を捨てても許される場所。

……街、とは言うけれど、実際はゴミ捨て場で。
国からは人が住んでいない空白の場所とされている。

そこには、この世のあらゆるものが捨てられる。

ゴミも
兵器も
死体も
赤子も

私は、そんな場所に捨てられた。

……「現代」という私の世界から。

この場所に。










01 どうにでもなっちまえ










「っあー……眠いなぁ…。」


瓦礫の山の中。
ゴロンと寝転んで空を見上げる。
少しばかり曇った空は、強い日差しを和らげてくれていた。


……私がこのHHの世界にトリップしてきてどれ程の時間が流れただろう。


15歳の時。
たまたま家でHHの本を読んでいれば、ぐらりと揺れた視界。
次いで視界に入ったのは……このゴミの山、流星街だった。

どうも私は、「私の世界」に捨てられたらしい。

当初は…突然の事にパニックになり、ただただ昼夜問わず発狂していた。
そりゃそうだろう。
日本と言う安全で守られた国から一転、突然衣食住どころか命の保証すらない世界に捨てられたのだ。

当時は生きる気力すらなくしかけていた。

でも、何だかんだで。
私はこの流星街の人間に拾われて、どうにかこの世界で生きている。

不幸中の幸い、というべきか。
ここにトリップしてきた私は何故か、身体能力が馬鹿みたいに上がっていた。
……いや、上がったなんてレベルじゃない程に。
(誰が素手でビルを破壊できると思うだろうか)

そして、このHHの世界には「念能力」という力が存在する。
どうやら私はこの世界の人間からすれば規格外の念能力を使えるようになっていたらしい。

そりゃもう、この世界で有名な暗殺一家の御隠居に
「化け物じゃな。」
と笑って言い放たれたほどだ。



…化け物並みの力を持つ殺し屋様に「化け物」と言われるほどの力を突然身に着けた心境を想像してほしい。



この事も私が発狂する要因の一つであったことは間違いないだろう。
(平々凡々の人間が、突然化け物になったんだから仕方ないと思いたい)

……まぁ、この化け物じみた力のおかげで生き延びているのもまた事実なのだけれど。

生きる過程で、何の因果かクロロと出会った。
「幻影旅団」という盗賊団を率いる団長様。
初めこそ恐れおののいていたものの……彼が私と同い年だったというのも打ち解ける切欠のひとつだっただろう。

彼と気が合った私は、一時期この世界を知るために彼と行動を共にしていたこともある。

……相当、酷い事をしてきたと思う。
スリなんて日常茶飯事だし、暴力をふるった事もある。
人を、殺したこともある。
今となってはもう、覚えていられない程に。

それでも平然と生きていられるのは……旅団と言う仲間の為だろうか。
(まぁ、正式な団員ではないのだけれど)

盗んで、殺して、祝杯を挙げて。
それらを気にしていたら……自我を保っていられなかったし。
見知らぬ他人よりも、仲間の方が比べられない程大事だから。

……かといって、戦闘が好きなわけじゃない。

もっぱら私は逃げ回るか隠れるだけだったし。
敵が向かって来たり、仲間がピンチになったときだけ力を使った。
……なんて、言い訳にしか聞こえないけれど。


この世界に捨てられて6年。
15だった私も成人して21歳。
よくもまぁ無事に生きてこられたものだ。


現代にいる家族たちは元気だろうか?
……私の事を覚えているだろうか?

今となっては現代に戻ったとしても、普通に生きていける自信はない。
……こんなにもこちらの世界に染まってしまったのだから。





―――…嗚呼、駄目だ。


昔の事ばかり考えて、少し気分が沈んでしまう。
さて、気分を変えて散歩でもしようか、と。
上半身を起こしたその時だった。


「……んん?」


ぱっくりと開いた空。

なんだろうあの割れ目、なんてぼんやりとしてしまっていたのは……。
きっと、昔を思い出してしまったからだろう。

まるで切れ目でも入ったかのようなその空は、ぱっくりと口をあけ。

馬鹿みたいにキョトンとしていた私を……。


「なっ……。」


バクリ、と飲み込んだ。

ぐらりと視界がまわり、意識がブラックアウト。
遠くなっていく意識の中、浮かんだ表情はもはや「諦め」だった。















(死ぬか。)
(生きるか。)
(あー、もう。)

(どうにでもなっちまえ。)


01 END



[*前] | [次#]
back


ゆめうつつ