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なんの変哲もない普通の日常。
朝起きて、学校行って、休みの日にはのんびりして。
これからもずっと、平凡な日常を死ぬまで送るものだと。
そう思ってた。
「…あ、起きた」
この日までは。
──
『……!!?』
とある休日。
特に予定のなかった私は目覚ましをかけずに起きたい時に起きようと前日布団に潜った。
そして朝目が覚めた時に声が聞こえた。
それは聞いたことのあるような声だったが今聞こえるにはおかしい声。
寝ぼけていたので夢か現実かもわからず、気のせいかなとさほど気にも留めずに再び目を閉じる。
が、数秒後に再び同じ声がした。
はっきりと聞き取れたそれに気のせいじゃないのかと疑い始める。
だがここは私の部屋。
人間は私以外いないはずで、物音も声がするような電子機器みたいなものもない。
あるとすればテレビやゲーム機くらいか。ちゃんと電源は切った記憶がある。
パソコンは昨日触っていないので関係ないはず。
他にあるとしたらケータイだが、目覚ましもかけてなければベッドとは距離があるので寝ている間に手が触れた訳でもない。
――じゃあなんなんだ。
寝起き早々少し恐怖も感じつつ、おそるおそる目を開いた。
「…あ、起きた」
そして今に至る。
『……!!?』
その光景に思わず飛び起きてベッドの横の壁に張り付く。
勢いでバンと大きな音がして、声の主は驚いているようだった。
「ごめん、驚かせるつもりはなかったんだけど……やっぱり驚くよな」
『…!?………!!?』
軽く苦笑いするその人は、私からすればよく知っている人物だった。
が、今ここにいるはずのない──いや、いてはならない人物だった。
「俺のこと…わかる?」
おそるおそる、それは目の前にいた彼も同じだったようで。
同い年か少し上くらいのその青年は緑の服にブーツ、グローブといった服装。
おまけに耳は長く尖っていて、髪は金色、瞳は青。
装備していたのは盾と剣。すべてにおいて、私が住んでいるこの日本という国に似つかない格好をしていた。
金髪に青目くらいなら外人であればいるだろうか。
そして服装に関しては外人でもいなさそうだが百歩譲っていたとしよう、しかし耳が長い人なんて聞いたことがない。
それでも私がこの人を知っていたのは、付近にあるゲーム機に関係していた。
『……、リン…ク……。』
「そうそう!
良かった、やっぱり知ってたんだな!」
その“彼”は嬉しそうな顔をしたが、一方で私は未だ動けないでいた。
リンク──ゲームの「ゼルダの伝説」シリーズに登場する勇者。
髪型や服装、年齢からして「トワイライトプリンセス」のリンクだろう。
シリーズの「時のオカリナ」にも同じくらいのリンクがいるが、髪型と服装が違う。
本人も頷いているので誰なのかは判明したが、「なんだリンクか」程度では済まされない。
――なぜ生きている次元が違うような人物が目の前にいるのだ。
背中に触る壁の感触や手に掴む布団の感触から、まだ夢を見ているようには思えない。
見た目は本人そのものだが、もしかして別の誰かなのでは。
剣だってまだ本物かどうかなんて確認していない。
作りものという可能性だってあるのでは。
そう疑い始めた私の頭はだんだん覚醒している模様。
『……確かに見た目はリンクだけど…それならなんでここにいるの?
誰かが手の込んでる変装しただけじゃないの?最近のコスプレはすごいからできなくもなさそうだし』
「コ、コスプレ?
…いや、そんなんじゃなくて!俺、気づいたらこの部屋に…」
『そんな言い訳が通じるとでも…』
「い、言い訳じゃない!
なんなら確かめてみてくれ、信じてもらえないと俺も困るんだよ!」
『……確かめるって…』
どうやって…、と疑いの目はそのままでリンクを見る。
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