五日目-1
「煉獄さん、血が出てますよ!」
掛かり稽古をしていたら、竈門少年にそう言われた。
「…む。気が付かなかった」
「結構出てますけど、痛くはないんですか?」
「全く痛くない。場所が悪かったのだろう」
溢れ出る血液を呑気に眺めながら返事をする。
昼下がり。今日は順番を入れ替えながら一人ずつ掛かり稽古をつけていた。
昨日は基礎体力をつける訓練が多かったので、今日はより実践を意識したものを。相変わらず我妻少年は「休暇じゃない」と文句を垂れているが。
指摘された傷は左手の手首にあった。切ったことに気付かなかったくらいなので痛みは全くなかったが、場所が場所なだけに血の量が多い。
力を籠め、全集中の呼吸で止血を試みる。
「よし、血は止まった…が、また傷が開かないように何か貰ってくるか」
「一旦洗ってきますか?」
「うむ、そうしよう。…おや」
手に流れた血を水で落とそうと思い立ち上がったところ、庭から見える部屋の向こう側に見覚えのある人影が。
布団を運んでいるようだがまあ、声を掛けるくらい良いだろう。何なら手伝ってもいい。
声を張るため、少し多めに息を吸い込んだ。
「明華ー!すまない!少々手を切ってしまったのだが、包帯か何かはあるだろうか!」
「れっ煉獄さん、今呼んじゃうと…」
『はい只今……っ!!?』
一度こちらへと寄ってきた明華が、俺を見るなり持っていた布団を床に落とす。
しまったと思ったのは、見る見るうちに彼女の顔が青ざめた理由を理解したときだった。
『いっ、急いで包帯お持ちします!!』
「あ、明華!血ならもう……!」
バタバタと駆けて行った明華の後ろ姿に、隣にいた竈門少年が「あー…」と残念そうな声を漏らした。
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