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「明華、もう一回」


『…うん、好きなだけどうぞ』




何度かキスをして、すぐにまた次のキス。――ああ、その余裕のなさそうな顔、好きだな。
杏寿郎にとって“恋”の最初の相手が私。それだけでものすごい優越感がある。
死ぬほど好きな人の好きな相手が自分だなんて。まるで現実じゃないみたい。
お互いに慣れてないキスが拙いところも、ときどき変におでこがぶつかっちゃうのも、全部ひっくるめて幸せだった。


あと何回こういうことができるのだろう。
杏寿郎も同じことを考えているのか、口数が少ないままただただ口付け合っていた。
唇を合わせるだけのキスじゃ足りなくなったのか舌を突き出してきて、要望に応えるようにそれを自分ので絡め取る。




「んっ、……ぁ、…」




必死なのか集中してるのか分からないけど、肩をぐいぐい押されたのでその体重で後ろに倒れる。落ちはしないけど、狭い。
そのまま深めのキスを何度かしていたら、杏寿郎の身体が乗っかっている足に違和感があった。




『ん…?……、…』


「ん?……!! …あ、その…」


『…さすがにこれ以上は責任取れないよ?』


「わ、分かっている!!」




「俺もそのつもりはない!!」とあたふたして身を起こす杏寿郎。まさかねとは思ってたけどまさかだったのでびっくりした。
スルーしようかなと一度は目を逸らしたものの、その反応で気付かれてしまったようで。杏寿郎にもそういう欲はあるんだなあと呑気に考えながらも、さっき太ももに感じたゴリッとした感触を思い出して少し恥ずかしくなった。




『あー……うーん…』


「き、気にしないでくれ!!さすがに俺も分別はついているというか、やって良いことと悪いことくらいは分かっている…!!」


『あ、うん、杏寿郎にはそういう心配はしてないよ。ただまあ、なんていうか……』




そのままにしておくのは可哀想だな、って思って。

考えていたことが口に出る。杏寿郎の顔は真っ赤だった。
二十歳…だもんね、杏寿郎。大人びてるけど。色っぽいことに縁がなさそうだから全然想像つかないし事情も知らないけど、少なくとも今の状況は私のせいだしなあ。
経験がないのは私も同じだから上手くできるかは分からないけど、もし杏寿郎が望むなら、やってみるくらいはいいかもしれない。




『手……なら、いいよ』


「…、えっ」


『一応、それ以外にも条件はつけさせてもらうけど』




「守れるなら」。
私の言葉に杏寿郎が真っ赤なまま固まる。


そっち方面に疎かったらちゃんと言わないと分かんないかな、と黙り込んだ彼を眺めて考えていたけど、
しばらくしてこちらに倒れてきた杏寿郎が小さな声で「お願いします」と言ったので、その頭をぽんぽんと撫でた。






にかく全部が可愛い


(……なるほど)




END.






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