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「“お嫁さん”と聞いたときも驚きましたが、まさか明華さんが未来の方だとは思いもしませんでした。
きっとお困りごとが多いでしょう?私で役に立てることがあれば、遠慮なく言ってくださいね」


『あ、ありがとうございます。
えっと……もし良かったら、後で着物の着方を教えてもらえたりしますか?時間があればで良いので…』


「着物…ですか?もしかして、未来では一般的ではないのでしょうか?」


「明華の世界で和服はほとんど見掛けなかったな!! 洋服が主流だ!!」


「そうなんですね。そんな基本的なところから違うとなると、他にもいろいろお困りなのでは?」


『はい、それはもう……』




しのぶさんの気遣いに苦笑する。衣食住、何もかもが違うと言っても過言ではないくらいには差があるので、もはやどこから手を着けたらいいのか分からない。
柱に手を煩わせるのは申し訳ないけど、「未来から来た」なんて理由をむやみに他人に言うわけにもいかないので、事情を把握している人間から知識を得てどうにか順応していくしかない。

「此方の世界にはスマホも冷蔵庫もないからな」と腕を組みながら言う杏寿郎に、蜜璃ちゃんがハッとした顔で「煉獄さんは行ってきたんですもんね」と答える。




「私も明華ちゃんが住んでる街に行ってみたかったわ〜!きっと私が知らない美味しいものもたくさんあるのよね!」


「うむ、肉の食べ放題があるぞ!」


「えっ!? ど、どういうことですか…!?」


「いいなあ、未来。なんだか楽しそう」


「あら、時透君が興味を示すなんて珍しいですね」




隣に杏寿郎がいることもあり、初対面でもそれなりに話が弾む。まだ緊張が完全に抜けきったわけではないけれど、だんだんと輪の中に溶け込めてきている気がして嬉しくなった。
鬼殺隊どころかこの世界の人間ですらないけど、無事に仲間に入れてもらえそうかな。

雑談が盛り上がる中、何となくみんなの後ろに座っていた悲鳴嶼さんから視線を向けられたような感じがした。




『悲鳴嶼さん、どうかされましたか?』


「いや……。君の気配が独特で、少々気になっていた。深い意味はない…。これからよろしく頼む…」


『はい、こちらこそ!』


「お、こっちも珍しいな。悲鳴嶼さんがすんなり他人を信じるなんて」




顎に手を当てて感心する宇髄さんに、悲鳴嶼さんが数珠をじゃりじゃりしながら「煉獄の嫁で、お館様もついていて、子供でもないようだから」と理由を答える。そういえば悲鳴嶼さんって、過去の経験から人間不信気味なところがあるんだっけ。特に子供相手には。
別に人間不信じゃなくても、私は怪しい人だとは思うけども。


「子供とまではいかないが若いだろ?」と宇髄さんが続けると、「宇髄と同じくらいなのでは?」とあっさり悲鳴嶼さんが返したので二度見してしまった。え、もしかして“気配”で年齢が分かるの?
びっくりしたのも束の間、宇髄さんや蜜璃ちゃんはおろか会話に混ざっていなかった義勇さんや不死川さんまで驚いた顔をしたので、なんだかいたたまれない気持ちになる。




『ご、ごめんなさい…。見えないかもしれないけど、一応24で……』


「え!? あんた、俺より年上なのか!?」


「やだ私ったら!いきなり馴れ馴れしくてごめんなさい!!」


『いや全然、むしろ仲良くしてもらえて、わたしとしては光栄というか……』


「はっはっは!懐かしいやり取りだな!!」




明華は見た目が若いからな!と横からフォローが入る。…うん、杏寿郎ともこのやり取りしたことあるよね。

年齢差なんかどうでもいいから仲良くしてください、と一生懸命身振り手振りで伝えていたら、談笑していたみんなが突然一斉に扉の方を向いて正座に座り直したので反射で背筋が伸びる。




「皆、待たせたね」


『(…え、もう戻ってきた!?)』




柱達がそんなことをする相手は限られているので予想はついてたけど、再度部屋に戻ってきたお館様の姿を確認して改めて驚く。
全巻あったわけではないとはいえ、読もうと思ったら早くても数時間は掛かる量なのに。まだ1時間も経っていないのでは?

慌てて崩していた足を正してみんなと共にお館様を迎えると、彼は向かい合わせになるように座ってからにっこりと微笑んだ。




「それじゃあ、会議の続きを始めようか」




原作で“1/fゆらぎ”と表現されていた穏やかな声が響く。雑談の時間はここまでのようだ。
一部話が出来なかった柱が居たから、また機会があるといいな。今はお館様のお話に集中しなければ。


シンと静まり返ったその部屋は、つい先程まで騒がしかったとは思えないくらいに静寂に包まれていた。






じめまして!


(仲間への第一歩、かな)




END.






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