こんなに可愛くなってるんだもの!
「リンク、見て!大きくなってる!?」
封印されて7年。
“勇者”として幼過ぎたオレは、マスターソードによって眠らされていた。
何も知らされていなかった分衝撃が大きい。ラウルさんに説明されてもぼんやりと事実が頭の中を通過するだけで、ただただ信じられなかった。
眠っていたから感覚はなかったし実感もわかないが、すっかり大人になった自分の体つきを見ると認めざるを得ない。
「7年も…。じゃあハイラルは今どうなって…?
……そうだ、レンは!」
“レン”――オレが7年前、仲が良かった同い年の女の子。デクの樹サマがコキリの森に連れて来たハイラル人。
オレが森を出た時、一緒に着いて来た子だ。
なぜ一緒に来たかと言われても理由はわからない。本人が言うには「デクの樹サマに言われたから」、とか。
おそらくレンが治療魔法を使えるからだと思う。
「戦えない代わりに」と、治療の他にも家事や身の回りの世話を一生懸命やってくれていた。
いつしか、こいつを守ってあげたいって。本気でそう思うようになった。
「そうだヨ、レンに何も言わずに…!」
「ラウルさん、あの、7年前にオレと同い年の女の子、外にいませんでした!?」
《!
……ああ、あの子か。あの子なら、インパを通してこのことを伝えてある》
「よ、良かった…。今レンは何処に?すぐ迎えに行きたいです!」
《ああ…そうじゃな、インパと共にカカリコ村にいるじゃろう》
「ありがとうございます!ナビィ、行こう!」
《ハイラルを頼んだぞ、勇者よ》
「はい!」
───
「…ハァ、……」
――ドサリ。
目の前で人型の物体が、倒れる。
「……っ、はー…。
変わりすぎだろハイラル…!!」
村へ向かうべく、早速外に飛び出したのはいいものの。
想像以上にハイラルは酷い有様だった。
まず目に入ったのは時の神殿の外にいた大量のリーデット。
街は暗くどんよりしていて人気がない。7年前とはまるで別の場所。
「いすぎだろ!何体目だよこれ!」
「分かんナイ…。
レン、大丈夫かなぁ…。」
「大丈夫だろ、インパさん強いだろうし」
――本当は、オレが守ってあげたかったけれど。
「ラスト!」
動きを止めたリーデットを切り裂けばおぞましい悲鳴が聞こえる。
完全に動かなくなったのを確認した後、急いで走り出した。
目指すはカカリコ村。
早く、会いたい。
───
「着いター!」
「レンは!?」
大体想像はついていた。7年前、あんなに人で賑わってたカカリコ村にはもうその面影がない。
人が何人かいるのを見ると城下町よりはいくらかマシらしいが、自分の知るカカリコ村はなかった。
こんな世界に7年間。突然、何も言わずにレンを一人にしてしまった。
「リンク!あそこ、誰かいるヨ!」
「――!」
ふよふよと目の前でナビィの光が揺れる。視線を移してみれば、確かに井戸の近くに人影。
人数は二人、遠すぎて顔は見えない。
「あ、動いタ!」
「…戦ってるのか?」
二つの影が交わると共に聞こえたのは金属音。どうやら剣のようなもので交戦中らしい。
もしかして人型のモンスターと人間なのでは、とも思ったが近付くにつれてそうではないことがわかった。
「んー…あの二人、何か話してるみたいだネ?友達なのカナ?」
「誰かわからないけど、レンのこと知ってるかも?
すみませーん、あの!」
人間だとわかれば話は早い。村の人ならレンのことも知っているだろう、そう思って駆け出す。
「!? インパさン!?」
「え、インパさん!?」
「――!
お前はあの時の…」
近づいてみればよく見知った顔で驚いた。ゼルダの乳母、インパ。
彼女なら確実にレンのことを知っている。7年越しの旅はなんとも幸先が良いらしい。
「レンは」、と。彼女ならそれだけで分かってくれると踏んで短く要件を話せば、なぜか彼女に首を傾げられた。
「お前、何を言ってるんだ?」
「え?何言ってって……」
「レンならここにいるだろうが。なあレン」
「………、え」
そう言って彼女は、すぐ後ろで息を切らしていた女性の肩に手を置く。
ゆっくり、ゆっくりと。見覚えのない女性がこちらを振り返って。
“リンク”、と。どこか聞き覚えのある澄んだ声がオレの名前を呼んだ。
『リンク?…リンク!?リンクなの!?』
「え、うそ、レン……?え、え!?」
『リンク!7年ぶり!!…もしかして私のこと、覚えてない?』
「そそそそんなことあるわけないだろ!!オレはレンのこと迎えに来て…!」
『本当?
…でもインパさんと一緒にいたのに……わからなかったの?』
「ご、ごめんってば…!だって……」
──だって、
こんなに可愛く
なってるんだもの!
(そんなに記憶に残ってなかったのかあ……私ちょっとショック)
(だってお前…!その、すっごくきれ……お、大人っぽく…)
(? 何か言った?)
(いいいや何も!)
END.