HappyHalloween!
『ハロウィン用の服選んでよ』
「別に何でも良いんじゃねえか?」
咲来に「買い物に付き合って」と連れ出されたのは一週間前のこと。
今日はみんなで集まって、各自思い思いの仮装をしてのハロウィンパーティ。
おれは彼女の咲来と、兄ちゃん二人と一緒に参加することになった。
サボは吸血鬼、エースは狼男、おれは一番気に入った海賊の衣装。
普段なら着ないような衣装を身にまとって会場に足を運ぶ。
『お兄さん達もありがとう』
「咲来かっわいー!」
咲来は先輩のナミから頼まれたとかなんとかでパーティ運営の手伝いをやっていたから、おれ達よりも早く会場にいた。
咲来を探しながら歩いて、数分後に人混みの中で見つけて声をかける。“耳”が長くて目立つから探しやすかった。
こちらに気付いた彼女はお菓子が入った箱を抱えながらやって来る。
少し丈の短いスカートにタイツ、頭にはぴょこぴょこした長い耳。彼女は“バニーガール”と言ってたような気がする。
「咲来すっげェ可愛い!」
「すげェ可愛い!」
『……もう』
「おい!勝手に咲来に近付くんじゃねーよ!」
エースとサボが上機嫌で咲来を褒めちぎる。それもそうだ、咲来がいるから今日おれに二人揃って着いてきたんだ。
二人を押しのけて咲来の前に立ちはだかるが、身長の高い彼らにはあんまり効果がない。上から覗き込むようにして咲来を見てくる。
「咲来すげェ似合ってるな」
「ルフィにしちゃ良いチョイスじゃねえの。この前一緒に買いに行ったんだよな?」
「行ったけどおれは選んでねェよ。咲来が選んだんだ」
「そうなのか?なんで?」
「だって咲来なら何でも可愛いと思ったし。実際可愛いだろ」
「「!」」
何の気なしにそう言ったらエースとサボが一瞬固まった後、「お前なあ…」と二人して呟く。
その反応に不思議がって隣の咲来に視線を向ければ、真っ赤な顔の咲来。
「……そういうとこだけは敵わねえなァ」
『こんなとこでそういうの大きな声で言わないでよルフィ』
「ん?んー…ごめん!まあいいじゃねェか事実なんだし!」
「お前咲来の言ってること全然分かってねえだろ…」
「それよりも咲来!菓子!くれるんだろ!」
『…あ、そうだった』
「忘れてた」と自分の持ってる箱の中身に目をやる咲来。綺麗に包装されたカップケーキがたくさん詰まった大きな箱。
「合言葉は?」と彼女は笑って首を傾げる。
「「「トリックオアトリート!」」」
『はい、どうぞ』
にこにこする咲来に、三人揃って一瞬見とれたのは内緒。
――
「んめー!どれもうめーな!!」
「…お前いくつ食べたんだよ」
仕事がある咲来と別れて兄弟だけで会場を練り歩く。咲来と同じような箱を持ったスタッフが何人もいたから、会った人全員にトリックオアトリートと言ってお菓子をもらった。
もらっては食べ、もらっては食べ。サボ曰く「見てるだけで腹一杯」らしい。
「よく甘いもんばっかそんなに入るな…」
「そろそろイベントも終わりそうだし、咲来迎えに行くか?」
「行く!!」
もう来た時ほど人がいない。みんな帰ってしまったのだろう。
イベントが終わりってことはつまり咲来の仕事も終わりってことで、今から迎えに行けばちょうどいい。
来た道を引き返して、まばらになった人の間を通り抜けて。
最初に咲来に会った場所付近に行けばまた、ぴょこぴょこしているうさぎの耳。
「咲来!トリックオアトリート!」
『ルフィ…もうないしルフィにはあげたでしょ、ひとり一回よ』
「えー!」
空っぽになった箱を見せられる。まあ時間からして当然の結果だった。
隣から「まだ食うのかよ」とツッコミ、おれからすればまだまだ食い足りないんだけども。あんな小さい菓子なんていくらでも食べられる。
「…ん?そういやトリートって“お菓子”だっけ?」
『元々は“おもてなし”って意味みたいよ。子供からするとそれがお菓子になるってわけ』
「じゃあまだ残ってるな、トリート!」
『…?』
箱を片付けながら咲来が振り返る。彼女が首を傾げて、それに合わせて耳も揺れた。
『!』
不意を突いて腕を引っ張って引き寄せる。
そのまま唇を唇で塞いで、その場に響く軽いリップ音。
『〜っ!!!』
「ん!トリート!!」
「……ルフィ、お前今日咲来に言われたこと覚えてる?」
「忘れた!!」
りんごみたいに真っ赤になった咲来を腕の中に閉じ込めて、「ハロウィン楽しいな」とおれの胸に顔を埋める咲来に笑いかけた。
HappyHalloween!
(今のってどっちかと言うと“トリック”じゃねえの?)
(うーん、そうとも言う)
END.