想像と現実が行き違う

 



「(よし!)」




この前の海軍との戦闘よりも、ちょっと遠出する情報収集任務よりも。
気合を入れて立ち上がった。




「(これを!咲来に!渡す!!)」




鼻息荒く立ち上がった自分の手には赤いリボンのかかったプレゼントボックス。
包装紙も赤、形はハート。こんなものを自分が買うことになるとは思ってもいなかった。

ホワイトデー。右も左もわからなかったおれに、これがオススメだとショップのお姉さんが渡してくれたもの。少なくともおれが選ぶよりは確実、だと思う。


それではいざ、咲来探しへ。




「…ん?」


「うお!?」




元気良くドアを開ければ部屋の前を通りがかったらしいマルコが突然目の前に現れてびっくりした。反射でプレゼントを背中側に隠す。




「まままままマルコ!おはよう!」


「…さっき食堂で会ったろい」


「えっ!?そうだっけ!?」


「同じ時間に朝飯食ったろ?…何か用か?」




やたらどもったせいで怪しまれたらしい。じとっと感じた視線はおそらく隠したプレゼントへ向かっているとは思うが、特にそれに関してツッコミはされなかった。

まだ眠そうなマルコに「咲来見かけなかったか」とだけ聞いてみる。




「咲来?ああ、あの子か……さっき確かサッチと食堂の端っこに…」


「サッチと?…分かった、ありがとよ」




またあいつか。咲来を見かけると大体近くにいるその人物。
気が合うのか、昼夜問わず一緒にいるのは何も今始まったことではない。

何とか咲来だけ声かけて呼び出そう。そう決めてマルコの指さした方向へ歩き出す。




「…どうでもいいが、隠してるつもりなら諦めなエース。お前のカッコじゃ無理だろい」


「!!」




別れ際、背中に回した赤い箱を指摘されながら。




――




「いた、」




食堂。確かに一番端っこの二人がけのテーブルにサッチと咲来の姿。
咲来は背中を向けていて顔は見えないが、後ろ姿で判別くらいはできる。

取り込み中かもしれないが「お返し持ってきた」と言えばサッチも分かってくれるだろう。咲来だけ抜けてこっちに来てもらえるはず。
そう考えて声をかけようとした、その時。




「好きなんでしょ?」


『え、ええ、まあ』


「じゃあいいじゃない。…何か困る?」




――何の話してんだ?
思わずピタリと足が止まる。

目を凝らしてみれば、テーブルの上に置いてあるのは花飾りのついた白い箱。多分あれはプレゼントだ。
じっとしていると次の言葉に詰まったらしい咲来がその箱をいじり始める。


これはもしかして、もしかするとだ。あのプレゼントはサッチが咲来に渡したもので、咲来は今、サッチに――




「サッチ!」


「!」


『!? エースさん!?』




気付けば飛び出していた。驚いて振り返った咲来と、さほど驚いてなさそうなサッチ。




「お前!知ってるくせに抜けがけなんて…」


「よおエース。待ってたぜ?」


「は?」




頬杖をついてニヤニヤしながらこっちを見てくるそいつ。
待ってたって何をだ、と睨み返す。




「そーんな怖い顔すんなよ。じゃ、おれっちは邪魔者だし退散としますか。頑張れよー咲来ちゃん!」


『え、あ、あの』


「…?」


「しっかりやれよエース!しくじってもおれはそこまで面倒見ねェぞ〜」




「じゃあな」と手をヒラヒラさせて食堂をさっさと後にしたサッチ。
――え、さっきの話は。告白の続きは。まだ途中だっただろ?


咲来が持ってたのは、本当にただのサッチからのお返しで。
あの時も咲来は別にサッチからの告白に困ってたわけじゃなくて、むしろおれの話をしていて言葉に詰まっていただけで。

おれがその事実を知るまでには、まだあと数分かかる。








(咲来、話があるんだ)
(は、はい!)








END.