Short Story





轟君に名前を呼ばれたい

お昼時の食堂でだけ、A組の彼を見ることができる。今日もこっそりと、後ろのほうから赤と白のコントラストを見つめる。

轟焦凍君。私が恋をしている男の子だ。

でも、彼には既に可愛い彼女がいた。彼と同じA組の女の子。いつだって笑顔で、体育祭で見た時の個性も凄くって。彼らが一緒にいるのを見た時は、悲しいとかそんなのよりもお似合いだなって思った。

勿論悔しくないわけじゃない。
私にもヒーローになれるような個性があれば、彼女にはなれなくても轟君に名前を呼んでもらえたかもしれない。少しでも勇気があれば話すことだってできたかもしれない。

でも、やっぱり勇気がない私はあきらめるしかないのだ。

轟君の彼女さんが席を立って食器を戻しに行く。その後ろを轟君もついていく。私の前を通ったときに轟君が彼女の名前を呼んだ。

優しくって、たまらない声。

ああ、私も彼女と同じ名前ならよかった。そうしたら、轟君に呼んでもらえたのになあ。