Short Story





○○です、縁下くん

「にゃー。」
学校のお昼休み。私はパンと昨日スーパーで買った猫のフードを持って学校付近の公園に来ていた。
お昼ということもあって公園には誰もいない。いや、正確に言うと私たち以外には人の姿はなかった。
私の足元には一匹の三毛猫。最近私の家に出入りしていて、野良猫なのだが半分私の家族となってきている。そんな猫の名前はちぃちゃん。
「ちぃちゃーん。」と呼ぶとしっぽをゆらりと揺らして近寄ってきた。
月曜と木曜の夜はやってくるちぃちゃんだが、お昼は水曜日にしかやってこない。
どこで何をしているのかはわからないが、お腹を空かしているのは確かだ。だから、こうやってこの公園にやってくる水曜日だけでも餌をあげようと思ってここに来るのだ。
ふわふわとした頭を優しくなでると気持ちよさそうに目を細めた。
ヒョイとちぃちゃんを抱いてベンチに座り、膝の上に乗せる。ちぃちゃんは私の膝の上で丸くなった。
「あのねーちいちゃん。」
私が呼びかけるようにするとちいちゃんは目は瞑ったままだったけど耳はしっかりとこちらに傾かれた。
「今日体育の授業があってね、縁下君がバレーやってたんだよ。」
私なんか躓いちゃって笑われたんだよ。と今日の体育についてを話す。
ちぃちゃんはまたか、というように顎を前足の上に置いた。
かっこよかったなあ。そう呟くとちぃちゃんは目をパッチリと開けた。
「どうしたのちぃちゃん?」
私が話しかけてもある一点を見つめたまま動かない。何かあるのかなと思って首を少し回すと、縁下君が立っていた。
「え、あ、」
「…あー、こんにちは。」
「う、ん。こんにちは。」
普段縁下君と話すことはあるが、それは最低限の会話だけだしこうやって二人きりになるなんてことはなかったからドキドキ緊張してしまう。
ちらり、もう一度彼に目を向けるとミルクを持っていた。
私の視線に気づいたのか、縁下君は隣に座ってミルクを開けた。
紙がこすれる音を聞いてちぃちゃんが私の膝から降りた。風が膝をなでて、すこし寒い。
「…もしかして、この子縁下君の猫だった?」
「えっ。いや、そっちの猫じゃなかったんだ。」
この猫、時々うちにやってくるんだよ。
優しそうな瞳がちぃちゃんに向かれた。
「私の家と一緒だね。この子、私たちの家行き来してたんだ。」
「みたいだね。」
そこで、会話が途切れた。
何か話すべきかと思ったが話題が思い浮かばない。
ちぃちゃんがミルクを飲み終えて、チャイムが鳴った。
携帯で時計を確認すると、もうあと何分かで授業が始まる時間だ。
「急ごっか。ばいばい。」
縁下君はちぃちゃんに別れを告げてこっちを見てきた。一緒の教室だし、一緒に行こうってことかな。
私「ばいばい。」とちぃちゃんに言って、学校に向かった。
「あ、あのさ。」
「え、何?」
「さっき、あの子に、話しかけてたよな?」
「う、あ、知って…!?てかいつから…!」
「あー、まあその辺はともかくさ、その、なんというか…」
バレーいつでも見に来ていいよ。
優しくはにかんだ彼の顔を見て、いてもたってもいられなくなった私は彼の顔を見れなくなってしまった。
かっこいい、の後に好きっては言わなくてよかった。

ネコ相手に恋の相談
(言えるようになるまで待っててほしいな、なんて)

title 序曲
過去サイトの小説を少し弄って掲載。