追崎優雨1 - 2
いかに人口の多い食堂が人の声に溢れているとはいえ、近くにある声にはフォーカスをしやすいというもので。
「なぁ蕨」
「いや、わかる。結構なボリュームだったな」
「そーだな。なんつーか、会話の量も内容も濃いめって感じ?」
「あの二人聞こえてくる噂全部ヤバいんだけど、もしかしたら全部尾鰭もげてんの?」
「もしそうだったら面白すぎだっつーの。確認したくなっちゃうじゃん?」
観葉植物を隔てたすぐ隣、二人の男が話をしている。先ほど立ち去った二人の女性に対して話をしており、盗み聞きが悪いことだという自覚があるのか、声のボリュームは非常に控えめになっていた。
「藤野さんってあれだろ? すげー早いの。橘さんといい勝負できるんじゃないかって言われてる」
「そうそう。スコーピオンの使い方がすげーうまいらしいじゃん? 噂だと喋った人が頭下げるとか」
「噂でこれってことは本当はもう土下座とかになるってこと? や、ヤベ〜……」
「追崎さんはいろんなとこに顔出しまくってるっぽいし、パーフェクトオールラウンダーになるんじゃないかって噂じゃん? 噂でこれならどうなるんだっつーの」
「春秋さんみたいに新しいやつ作るんじゃね? 何かは知らないけど」
存在しない尾鰭を作って散々盛り上がり、ケラケラと満足するまで笑い切った後、鞄から課題と筆記用具を取り出した。
双方喧騒の中の方が集中できる性格らしく、先ほどまで他人の噂話で笑っていたとは思えない真面目さを見せていた。
「あ、このフライドポテト冷めてる」
「マジ? さっさと食って新しいの買おーぜ。ジャンケンで負けた方の奢りな」
「東おめーこないだもそれで俺に奢らせたよな!?」
(了)