※爆豪が拗れてる
期末テストまで残り一週間を切った休日の夕方。目の前には黙々と勉強を進めている幼馴染。そんな幼馴染の姿を、まるでご褒美を待つ犬のようにかれこれ一時間以上も見続けている私。
何故こうなったのか。あのメッセージが原因だった。
テスト期間とあらば、私だって人並みに勉強だって頑張ったりする。今年は受験生であるから気合だっていつもとは違う。そんな私に、自身のスマートフォンからメッセージが届いていた。
送り主の名前を見るとスマホのディスプレイには‘‘爆豪勝己’’という幼馴染の名前が映し出されている。その名前に思わず「へっ、」と驚きの声を上げてしまった。
爆豪勝己とは小さい頃からの知り合いだったが、今ではもう疎遠になってしまった仲だ。小学校高学年の時に子供ながら持っていた携帯にどういう経緯で登録したのかもう覚えていないがその幼馴染のアドレスを登録していた。
中学に上がり、携帯を変えてからは前の携帯のデータとしてアドレスが連絡先に残っていた。ただ、それだけだ。
そりゃあ、だって、連絡先を交換してから2年の月日は経っている筈だし、携帯だってもう機種変更しているだろうし、彼の事だから、あーこんな奴居たっけな、でも別にもうあんな奴のアドレスなんか要らねぇなとか思って削除していると思ってたから尚更。
あの幼馴染が、おかしなこともあるもんだ、という意味を込めて自室の窓から、その先の家の窓を見つめる。やはりカーテンは閉まったままだ。
昔はよく窓際で二人、合図を送ったりして遊んでいたのに。思春期に入った男女の幼馴染とはこうも疎遠になったりするものなのか。
はっとそこで思い出す。肝心なのはその幼馴染からのメッセの内容だ。
『今からウチに来い』
彼は不良ではあるが自身の汚点になるような目立つ真似はしないし、なんなら運動は出来るし勉強も出来る。そう。料理だってなんだって、やれば出来てしまう。そんな彼が私に、勉強を教えてくれ、なんて言うだろうか?
一体何故呼ばれているのか意味を考えている間にも時間は進む。これ以上待たせていたら着信までかかってきそうなので、とりあえず『わかった』とだけ云年ぶりの返事を返してから簡単に着替えて家を出た。お隣さんなので徒歩30秒もかからない。
インターホンを鳴らすとトントンという足音が聞こえた後、ガチャリ、とドアを開けた学校で見慣れた顔だがラフな私服姿の幼馴染が出てきた。
「入れ」
「えっ、あ、いや……お邪魔します」
用件だけ聞き出したら、気まずいし帰ろうかな、と思ったけどとても断れる雰囲気ではなかったのでそのままの成り行きで家に入った。やけに静かだったので聞いてみると、どうやら家族は家には居ないらしい。
そして彼の本やら物やらがきっちり整理整頓されている部屋に通される。
もう長い間会話という会話をする機会が無かったので上手く喋れるか不安だったが、案外最低限の会話は出来ていて安心した。
何処に座ったらいいのか分からなかったのでとりあえずベッドのそばの床に座ることにして、(昔はベッドに遠慮なくどっかり座ったものだが、今では恐れ多くてそんなことは出来ない。)爆豪くんは自分の机の椅子に座る。
これから何するんだろう…と正座して身構えていると、爆豪くんはさも私が居ることを忘れているかのように机へ向かって一人、勉強をやり始めた。
そこで冒頭に戻る。
「爆豪くん、」
「あ?」
「私も……勉強あるんだけど」
「うるせえ オマエはただ此処に居ろ」
勉強道具を持って来なかったオマエが悪い、と言い捨てて勝己くんはまた視線を机の方に向けてしまった。
じゃあせめて取りに帰らせてくれ。
それからまた暇潰しにそこらへんにあった雑誌や漫画を幾つか取って読んでいたが、いつしか眠気が襲ってきて、意識が朦朧としてくる。
「あー、クソつまんねえな、お前。…オイ、ちょっとこっち来い」
うつらうつらとしていた私の頭に、だるそうな爆豪くんの声が上から降ってくる。
「?」
よく分からなかったがとりあえず爆豪くんの近くへ歩いて行く。
「勉強教えてやるよ」
「!…ほんと?」
「ああ。」
どういう風の吹き回しかは知らないが、勉強を教えてもらえるというのがなんだか昔みたいで、素直に嬉しかった。「ありがとう」と言おうとした時、爆豪くんは自分の膝辺りをポンポンと叩いた。
「へ…?」
「だから、教えてやるから座れ」
「や、でも…」
「いいから座れっつってんだろが」
グイっと腕を引かれてそのまま爆豪くんの膝の上に乗せられる形になる。
ちょっとまって、こんな
「何でこんなこと」
「ハッ、中学生のクセにこんなエロい身体しやがって」
「や、やめ、」
スルリと勝己くんは手を滑り込ませて太もも辺りを撫で始める。肩はがっちり掴まれていて立てないし、くすぐったくて上手く力も入らない。
「ねぇ、なに…!?やめて、」
「勉強に集中しなくていいのかよ?」
勉強も集中もあったもんじゃない。
ぅぅ…と情けない声が溢れる。抵抗しようとすれば今度は服の中に手を入れて胸の辺りを弄られる。
「ひっ……あ…っ、っ、」
「随分良さそうな声出してんなあ?」
「は、なして…」
訳が分からない。じわ、と涙で視界が滲んできた。爆豪くんは心底嬉しそうな顔で「そうだ、お前に聞きたいことがあったんだったわ、」と続けた。
「なぁ、ナマエ。お前、最近デクの奴と仲良さそうじゃねえか。もしかして付き合ってんのか?」
「えっ……?」
確かに出久くんとはもう一人の幼馴染でもあるし、優しいから、話したりはする。雄英高校を目指すって言ってから今年に入って凄く目付きも変わって、ひたすらに頑張る出久くんはかっこよかった。それを陰ながらひっそりと応援していた。
でも、付き合ってなんかはいない。本当だ。
「つっ、付き合ってなんかいないよ」
「本当の事言えよ、嘘ついてんなら犯す」
「ほんと…!うそついてなんか、ない」
「…デクばっかみてるお前見てると、俺はムカつくんだよ、クソが…!!」
身体を抱えられてそのまま乱暴にベッドに突き落とされる。すぐに体制を立て直そうとすれば、爆豪くんは私の腕を掴み、押し倒した。
「学年が上がって他のクラスになってからよォ、随分ナマエ楽しそうにしてたじゃねぇか、そんなに俺の居ないクラスは楽しかったか?」
「何を…言ってるの…?」
「喋んじゃねぇ!!!」
怒鳴ると親指を口の中に入れ、喉の奥にまでグッグッと押し込まれる。涎が口の周りに伝う。
「ぉぇ…」
「ずっと澄ました顔してよぉ、名前の呼び方も昔はかっちゃんかっちゃん煩かったのに今では何だ?『爆豪くん』?気持ち悪い。俺と幼馴染みってことはクラスの奴等に隠して、デクのことは幼馴染み呼ばわりして、俺を差別して。それでストレス溜まって俺が何度も何度もアイツを殴ってもその度に結局お前はデクのトコ行って励まして、手当てして、俺のことは悪者扱い。悲しいなあ?ナマエのせいで俺はこんなにも悲しいのに、テメェはそんなこと知らねえ顔でデクばっかり。俺とクラスが変わればほっとした顔でまたデクばっかりだ!!!!」
爆豪くんが何を言っているのか分からない、けど、私が爆豪くんを傷つけているとは思ってなかった。だってかっちゃんは私のこと、
「俺の名前…呼べよ、なぁ……」
きらいだと、おもってたから。
まだ間に合うから