「どう思います乱菊さんこのかっこよさ!!」
「ごめん全然わかんないわ」

 女性死神協会の会合の帰り、飲みたい気分だからと乱菊さんに居酒屋に連れ込まれてしまった。まあせっかくだし私もいくらかお酒を飲んで、最近の阿近さんのかっこよさについてを延々語っていたわけだが。

「阿近のどこがいいワケ?愛想悪いし気難しそうだし何がいいのかサッパリだわ」
「さっきの私の話聞いてました!?すごい優しいじゃないですか!」

 ダン!とグラスを置いて力説する私に、乱菊さんは半ば呆れ顔でそぉ〜?とまだ納得いかない様子だ。まあもし乱菊さんがライバルとして立ちはだかってしまったら私みたいな平凡顔寸胴女に勝ち目はないので阿近さんの魅力を伝えるのはこれくらいにしておく。
 乱菊さんには、私が女性死神協会に入れてもらった時から良くしてもらっている。女性死神協会は伝令神機のデザインやらソウルキャンディの新作やら何かと技局が絡んでくるプロジェクトが多く、だったらいっそ局員を引き込もうということで抜擢されたのが私だったらしい。

「てかあんた結構長いこと阿近のこと好きじゃない?」
「まあ……そうですね」
「いい加減告白しなさいよ」
「は!?」

 予想外の言葉に思わず大声を上げてしまい、周りのお客さんから注目を浴びてしまう。スミマセン、とぺこぺこ頭を下げて視線を散らせてから乱菊さんに向き直ると、さっきのように呆れ顔をしながら杯を傾けていた。

「あんたねえ……阿近とどうにかなりたいって気持ちないワケ?」
「ど、どうにかとは」
「言わなくたってわかるでしょ」

 阿近さんと私が、どうにかなる……。正直全く想像がつかなくて悲しい。私が阿近さんに告白したとして、いい返事をもらえるとは到底思えない。というか告白なんて、考えただけで顔が火照る程度には恥ずかしい、し。阿近さんと向き合うだけでもそれはもう緊張するのに、気持ちを伝えるなんて芸当私には当面出来そうもない。

「まあ急ぐもんでもないけど、せめてアプローチくらいはしなさいよ」
「アプローチ……」
「あんたどうせ阿近さんのそばに居られれば幸せ〜とかお花畑みたいなこと考えてんでしょ。そんなんで満足していいのは子供のうちだけよ」

 ビシッと指を差され、その鋭い眼光に思わず口を噤む。悔しいことに乱菊さんの言うことは完全に正解だった。そりゃいつかは阿近さんと、と夢見たりはするものの、今はこうして阿近さんのそばに居られるだけで幸せだと現在進行形で思ってしまっている。けどまあ確かに、私だってこうして日本酒で喉を潤せる程度の歳なわけで。
 でも、あの阿近さん相手に私なんかがアプローチだなんて。こういう卑屈な思考は良くないとわかってるけど、やっぱり考えてしまうものは仕方がない。技局や十二番隊を背負う立場の人に、私みたいな下っぱが……。

「可愛い子にアプローチされて嫌に思う男なんていないわよ」
「残念ながら平凡顔です」
「あんた少しは自信持ちなさいよ」

 乱菊さんが私のグラスに酒を注ぐ。自分のどこに自信を持っていいのかちょっとよくわからないけれど、まあここはお酒の力を借りて無理矢理プラスにもっていこう。ぐいっと杯を傾けると、いい飲みっぷりだと乱菊さんに頭をわしゃわしゃ撫でられた。

「あの阿近がそんなに優しくしてくれてんだったら少なくとも嫌われてはないはずよ。むしろ阿近内好感度ランキング上位に食い込むわ」
「なんですかそのランキング……」
「男ってのはみんなバカだから、女として見てない子でも誘われようもんならコロッと意識し出すわよ」
「乱菊さん、阿近さんってバカじゃないんですよ」
「バカじゃなくても男でしょ!」

 今度は乱菊さんがダン!と音を立てて机に叩きつける。グラスではなく一升瓶を。ちびちび注ぐのが面倒になったのかもはや瓶をそのまま傾ける乱菊さんに苦笑しつつ、反論するとロクなことがないので黙って話を聞くことにした。最初のうちこそうんうんと頷いていたものの、お互いお酒が進むにつれてどんどんしょうもない話になっていって。だいたい紫乃はね、と乱菊さんが虚ろな目で語り出したのを最後に、私の記憶は途切れた。