1.この世界に生まれる
私は何処にもいるような主婦だった。
大好きな旦那と愛する子供がいる、
なんてことの無い幸せな毎日だった。
しかし、終わりは突然訪れる。
ある日、私は子供を学校に送る途中、道路に飛び出した娘を庇って死んだのだ。
微かに残った死の間際、何度も私を呼びながら死なないで、何処にも行かないでと泣き叫ぶ娘。
泣き叫ぶ我が子に、薄れゆく意識の中、引き攣る頬を無理やり動かして笑う。
「、あいしてるわ…わた、しの…
かわいい、こ……」
私が死んだ後きっと自分のせいだと自分を責めてしまうような優しい子。
あなたのせいじゃない、そんな意味を込めた私の最後の言葉。
霞む目に移る娘には届いたのだろうか。
そこで私の記憶終わった。
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そんな私が次に目を覚ました時に見たものは、眩い光だった。暗闇から明るみに急に出た事により驚いてしまった私が出してしまった声。それは、
「おぎゃあ、おぎゃあ」
聞き覚えのある赤子の声だった。
……赤子?疑問で頭が回らなくなる。
「アンタ、可愛い女の子だよ!ほら抱いてやんな、あんたの娘さ!」
年配の女性が誰かに声をかけ、私の体を誰かに預けた。
「本当ねぇ…可愛い、私の娘……私が、ママがこれから貴女を守るからね…っ…」
狭い視界の中、
優しく私の体を抱いてくれ、
目の縁に涙を貯めたこの女性に私は
あぁ、この人母親になったんだ…
と昔の自分と重なった。
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